組織委員会が、オリンピック・パラリンピック大会(以後、五輪という)の開催期間を含む2020年5月から約5か月間(一部報道では、11月までの7ヶ月)、明治神宮球場の使用に五輪協力を求めた問題について、遠藤五輪相は会見で、「これは交渉事であって、なぜこれが大事になるのか」と、騒ぐ話ではないと疑問を呈したことに反発が広がっています。

まず、今回の神宮球場問題は、新国立競技場やエンブレムの白紙撤回や聖火台騒動とは異なり、直接に実害を受けるスポーツ大会が複数あるということです。それに対して、遠藤大臣は、配慮を示したうえでお願いに徹するべきなのに、当然のことであると発言することは、「そこのけ、そこのけ、五輪が通る。」と受け止められます。

五輪の準備に際して、各方面に及ぼす迷惑については、これからも理解を得るよう丁寧にお願いをしなければ、五輪への支持や協力に大きく影響しかねません。

さて、今回の神宮球場への依頼を分析してみます。

【神宮球場の重要性】 

① もともと、神宮外苑の一帯は、余裕スペースが少なく、五輪大会時に必要な仮設等の整備は、極めて厳しいとみられていました。しかし、五輪開催中と前後を含めて、大規模な警備体制は絶対条件であり、重点的に整備しなければなりません。そのためには、新国立競技場内だけでなく、周辺から俯瞰的に警備体制を維持し、長期間駐在できる大きな施設が必要となります。そのためには、2つある神宮球場の片方を、警備本部にしたいはずです。

➁ なお、一部報道で言われている、資材置き場や選手控え場所であれば、わざわざ神宮球場を7カ月も独占する説明にはならないし、誰も納得しないでしょう。これは、警備情報をできるだけオープンにしたくないために、カモフラージュだと言いませんが、資材置き場などの必要性を説明したと思います。

➂ 五輪開催期間中は、世界の報道関係者が集まる大規模なプレスセンターが必要です。しかし、外苑内には、余裕地が少なく大規模な仮設は作れません。その場所として、神宮球場を考えたかもしれませんが、8万人クラスの新国立競技場ができれば、スタンド下は、五輪時ガラガラですので、そこにプレスセンターを作れば済むと思います。今回の必要性の理由ではないと思います。

➃ 外苑の再開発計画によれば、臨時駐車場にした秩父宮ラグビー場に、新神宮球場を作ることになっています。そのためには、五輪後にこれまでの使用団体に戻ってくれなければ、新球場が使われなくなる危険があります。そのためには、神宮球場側は、9月には五輪利用から外してほしいと思っているはずです。

【迷惑を受ける大会】

① プロ球団であるヤクルトは大変でしょう。広告料や年間チケットなど、被害は大きいと思います。

➁ 学生野球と高校野球も困るとは思いますが、補償問題は別にして、会場探しは可能だと思います。理由の一つは、一般的に大型の公共スポーツ施設は、国内外の大規模大会・競技会を3年前に予約確認をします。その次に2年前、1年前にと、中規模や不定期な大会・競技会を順次受け付けます。ですから、学生大会を臨時的に調整して受け入れてもらうには、3年以上前から交渉しなければなりません。JSCはその期間を見越して、4年前のこの時点で神宮球場の貸し切りを依頼したのではないかと思います。

【五輪のためには】

① 五輪前には、本番のシミュレーションとなるプレ大会の開催が必要です。神宮球場を自由に使える期間が、5月からで間に合うのでしょうか。まだ、陸上競技のプレ大会時期は決まっていませんが、5月前に開催するならば、3月ごろから必要になるのではないでしょうか。