自治体の公共体育施設では、パラリンピック種目である「車椅子バスケットボール」「車椅子ラグビー(ウィルチェアーラグビー)」の大会や練習使用を、様々な理由を挙げて許可しないケースが多くなっています。

 両競技とも、車椅子同士がぶつかりまさに格闘技のような激しいバトルが床面で繰り広げられます。そのため、「床が傷つく」「タイヤのゴム跡が取れない」「壁面が壊れる」など、後利用に支障をきたすというのが主な理由です。

 いうまでもなく、東京都はパラリンピックの関心を高め啓発を進めています。また、国は「障害者差別解消法」を4月1日に施行して、公共サービスの差別的取り扱いを禁止するよう求めています。

 許可されなかった団体からみれば、公平・平等を前提とする公共施設は、そのような理由で拒否すべきではないと主張します。当然の主張です。

 しかし、現場の理解はそう簡単ではありません。ある公共体育館では、車いすバスケの大会を受け入れたところ、タイヤのゴム跡が残り、その後の施設利用を止めざるを得なかったとか、床に窪みができて、床板の一部を張り替えて相当の補修費と日数がかかったと聞きます。

 実は、今の公共体育施設は、ほとんど、民間業者が指定管理者として施設の管理運営を行政から委任(行政処分)されており、主体的に経営しています。

 自治体は、平成15年に改正された地方自治法による「指定管理者制度」に基づき、民間に指定管理として委任することで、これまでの行政直営(財団管理を含む)より管理運営料を約2~3割低く設定でき節減しています。

 ぎりぎりの指定管理料で経営している民間事業者にとっては、予定外に経費負担が増えることは経営に影響してきます。今回のように、施設利用減や補修費増が増えたとしても、自治体は、障害者スポーツを受け入れなさいと言いながら、経費負担は面倒を見てくれません。

 今でこそ、当たり前になってきましたが、以前には、木床での社交ダンスで、女性のハイヒールやシューズが嫌われたケースもありました。室内フットボールでも壁が壊れるという同様の意見があったことを思い出します。

 今後の自治体は、木床の多様な使用を許可していくために、指定管理者に負担を押し付けるのではなく、必要な経費を補てんすることで、パラリンピック振興を支援していく必要があります。