2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下、五輪という)の仮設施設の整備費が、招致計画において723億円(11施設予定)だったのに、組織委員会は、仮設数を7つに減らしたにもかかわらず、現段階で3千億円まで膨らんでいると発表しました。

 マスコミ等からは、当然ながら「あまりにずさんではないか」と批判を受けています。

 まず、弁解するわけではないですが、招致段階での建設費は、競技会場の本体価格(IOCが求める数字)を、類似する他施設の建設費を参考に、ざっくりと見積もっただけの金額です。
 あの時の数字と、招致決定後に実際の建設経費の見積もりを比較することは、あまり意味がありません。

 また、その乖離が4倍に膨張したという批判は、確かに見積もりが甘かったわけですが、意図的に偽ったわけではなく、ある程度やむを得ない結果といわざるを得ません。

 これからの経費削減に向けた見直しをどうするか。東京都は、都民に対して、これまでの経緯と今後の考え方を説明して理解を求めていく以外にありません。

 それでも、経費削減を正攻法で工夫していくのは限界があります。
 では、どうするか。賛否は別にしてこんな手法も考えると思います。

● 施設の用途変更で、別途予算にする。
 実は、プロジェクトの全体経費が、予算以上に必要経費が膨らむと、どうするか。
 少々姑息ですが、施設の用途変更や設置目的の変更をかけて、全体経費から外すことで経費削減を図ったように見せることがあります。これも行政手法の一つです。

 すでに、仮設予定であった「有明体操競技場」は、大会後に展示場として10年間活用するとして、組織委の負担予定を、都が費用負担することを表明しました。
 この意味は「都民の皆さん、この施設は展示場として必要なので都事業として作ります。でも、せっかくですから、五輪会場として活用しますので、ご理解ください。」として、建設経費は、五輪経費に入れず、展示場設置費として別枠にするわけです。

● 五輪に必須でない設備は、五輪後に回す。
 建設計画において設置予定だった設備や機能の中で、五輪大会の開催に支障がない部分を、大会後に後回しすることで、全体の建設費から削減します。
 すなわち、大会後に必要な維持管経費を後年度負担に残すわけです。
 また、設備費の予定単価を落とすことで、全体経費を抑えることもありますが、その場合は、大会後の使用において、故障や寿命の問題が残ります。

● 肥大化した大会開催経費は、負債として残る。
 それでも、経費負担はオーバーになり負債が残ります。ちなみに、長野冬季五輪は、大会後に大きな負債が残り20年以上かけて償還しているところです。

 東京五輪においても、都民に対して負債を隠さず、五輪による経済効果や社会効果の増収等で、負債を計画的に償還できることを説明し理解を求めなければなりません。(この件は、別途の政策主張に残します。)

【五輪経費の分担を確認】
 いうまでもなく、五輪は都市開催ですので、第一義的に、東京都が大会関係経費を支出しなければなりません。
 また、組織委員会は、基本的にスポンサー料とIOCからの分担金が原資(約4500億円の見込)になっていますが、その原資で不足する必要経費は、開催都市が協議のうえ補填する必要があります。

【大会総経費は、2兆円、3兆円?】
 以前にも、NHKが、五輪運営費が、立候補段階の3千億円が6倍となる1兆8千億円に上ると報道したことで、批判が沸き上がりました。
 昨年には、森会長が2兆円はかかると発言し、舛添知事もロンドンで3兆円と聞かされて、何とか2兆円以下に絞りたいと発言しています。

 また、リオデジャネイロ五輪でも、今年1月に、大会関連予算の総額は390億レアル(約1兆1700億円)になると公式発表しています。

 すぐに、数字だけで比較されますが、運営費や大会関連予算は、何をどこまで含めて五輪経費に積算するのか。
 その経費負担は、国を含めてどのように分担していくのか。しっかりと見とどけましょう。(この件も、別途の政策主張に残します。)