新国立競技場の整備に必要な財源を確保するために、(独法)日本スポーツ振興センター法(通称:JSC法)とスポーツ振興投票の実施等に関する法律(通称:TOTO法)の改正案が、参院本会議で可決・成立し、公布日(5月)から施行されます。

 この改正法は、平成28年度から8年間、スポーツ振興くじの売上金のうち、新国立競技場建設費に充てる目的(特定金額)で、現行の5%から10%に引き上げました。

● 実は、この10%は、実質20%のこと
 下の表をご覧ください。

 平成26年度の売上金の総額は、約1,108億円でした。

 その50%は、くじの当選者への払戻金であり、JSCの収入ではありません。とすれば、くじによる収益は、554億円と考えるべきでしょう。

 でも、払戻金を含む売上10%を、国民の皆さんは、儲けの10%と思っていませんか。とんでもない、収益金を儲けとすれば、倍の20%ではないですか。

 もっと言えば、収益金554億円の中には、運営費(人件費を含む)として191億円が含まれており、それを除く純益で考えれば、新国立用の特定金額は、約31%を占めることになります。

 すなわち、毎年のサッカーくじで儲かったお金の約3分の1を、施設整備費に使い続けますというのが、正しい説明ではないですか。

 マスコミは、売上金額の10%ばかり報道するので、オリンピックや新国立競技場の税金使いを批判する人と話をすると、賭けのあがり10%は少ないぐらいだと言います。
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● あおりを受ける国民スポーツの財源
 さらに、皆さんはご存知ですか。このTOTO収益ができたことで、財務省は、国民のスポーツ振興費を削減してきたことを・・・

 上の表をご覧ください。
 今回の法改正でも、本来の配分(新国立の建設費が必要でなかった場合)であれば、平成26年度の売上で計算すると、「地方自治体」と「スポーツ団体」への助成総額は232億円になったはずなのです。
 それに、5%の特定金額が導入されたことで、195億円に大幅に減額となっていました。

 今回の10%では、さすがに財務省もまずいと思ったのか、微調整で目減りを少なくしましたが、それでも、2億円減の193億円です。
 今のTOTOは、国民のスポーツ振興費を犠牲にして、新国立競技場建設のために、儲けに遁走しているといっても過言ではありません。

● TOTOは、「サッカーくじ」から「スポーツくじ」へ
 最近のテレビコマーシャルで、「サッカーくじ」が、いつの間にか、「スポーツくじ」と画面に表れているのをご存知ですか。

 巧みな戦略ですね。国内のJリーグサッカーを対象としてきたTOTOは、すでに、Wカップ戦やドイツやイングランドのリーグ、カップ戦も対象になっていますが、あまり売り上げは伸びていません。

 そのため、遠藤大臣などは、バスケットボール、ラグビー、プロ野球などをTOTOの対象試合にしようと工作しています。その上、予想ではなくコンピュータによる自動選択だから、八百長発生しないと理解を求めています。

 また、販売銀行では、「サッカーを知らなくても気軽にサッカーくじを楽しめる。勝敗予想はコンピューターにおまかせ。あなたは購入口数を指定するだけ」と健全性をアピールしています。

 しかし、スポーツくじを買った方はどうでしょうか。仮に、巨人対阪神戦で、もし巨人が勝っていれば、自分が6億円当たっていたと、後でわかったら悔しくて収まらないでしょう。そうすれば、「なぜ、巨人のエースが簡単に打たれて負けたのか。八百長があったとしか思えない。」とネットでの腹いせをしたくなります。それに同調する書き込みが加わると、煙のないところに火が燃え上がることになります。ネット社会は怖いですからね。

 さらに、日本の主要なスポーツが、TOTO対象になれば、テレビ画面を見ながら競馬の馬券を握りしめて「1番勝て」と叫ぶような、スポーツ観戦が増えるのでしょうね。

 次回に、次の解説を書きます。

● 東京都が新国立競技場に整備費を支出できる法的根拠も盛り込んだ。

● 「8年後に見直す」は、建設費を維持費に見直すだろう。