姑息な法改正で国有財産に都民が税負担
 国は、新国立競技場の新たな整備財源の仕組みを公表しました。
 その目的の一つは、TOTOの収益金を5%から10%(実質は30%以上と前回に解説)に引き上げることです。この件は、前回の当ブログをご覧ください。

 もう一つの目的は、東京都に応分の税負担を求めるために必要な法整備を行うことです。
 現在は、自治体に権限のない事業に、国が自治体へ費用負担させることを禁じている「地方財政法」があるため、無条件で都に支出させるわけにはいきません。
 強行すれば、都民から住民監査請求や住民訴訟を起こされるリスクをはらんでいます。

 そのため、都の負担を合法化するため、「独立行政法人日本スポーツ振興センター法(以下、センター法)」を、都と国が事務レベルで事前に合意したうえで改正しました。
 
 しかし、法文には新国立競技場のためと書き込めないため、一般的な事案として附則に、「地域の発展に資する施設を整備する場合は、都道府県が3分の1以内を負担する」という規定にしたわけです。
 
 そうなると、例えば、今後の札幌冬季五輪やサッカーWカップなどで、国が施設整備費を支援する場合は、財務省予算ではなく、TOTOの収益金が支援財源になる道が開かれたことになります。
 新国立競技場の経費負担がその前例になる訳です。これでいいのですか。

 なお、附則に定められた「都道府県の負担制度の創設」は、オリンピックまでの期間限定ではありません。
 平成28事業年度から平成35事業年度までと期限を定めているのは、TOTO売上額を5%から10%に変更することだけです。

【センター法改正】
(特定業務に係る施設の整備に要する費用についての都道府県の負担)
附則第8条の十 特定業務に係る施設のうち、地域の発展に特に資するものとして政令で定める施設の整備に要する費用は、当該政令で定める施設が存する都道府県が、その3分の1以内を負担する。
2 前項の場合において、当該都道府県が負担する費用の額及び負担の方法は、センターと当該都道府県とが協議して定める。
3 前項の規定による協議が成立しないときは、当事者の申請に基づき、文部科学大臣が裁定する。この場合において、文部科学大臣は、当事者の意見を聴かなければならない。

 東京都も新国立競技場の建設費負担額(1581億円の4分の1⦅395億円⦆+デッキ等⦅53億円⦆=448億円)が、固定したわけではありません。
 建設工事の進捗において、賃金や物価等の変動や消費税10%の適用により建設費が上昇した場合は、例の2:1:1で増加分を分担することになっています。その根拠は、「公共工事標準請負契約約款 第25条(賃金又は物価の変動に基づく請負代金額の変更)」に準ずることで取り決めています。
 
 新国立競技場の建設費が、最終的に1581億円で止まるなんて行政経験者はほとんど信じていません。
 例えば、400億円が増加した場合は、東京都が100億円を追加負担しなければならないというわけです。

 これまでも、地方の道路や橋など大規模公共工事には、地元の受益のために都道府県の負担を求めてきた経緯はあります。
 しかし、今回は、国費ではなく対象がTOTO収益金ですから、財務省はほとんど財政出動せずに済みます。一方、東京都は完全に都民税です。
 今後のためにも、都道府県行政は、懸念を表明したほうがいいのではないですか。
 
 さらに言えば、都内には、「代々木体育館」や「日本武道館」などがあります。
 舛添知事は「大会後も都民に大きな便益をもたらすことを踏まえ、この案に合意する。」と述べていますが、都民の利便性を理由に、国から大規模改修費の負担まで求められる可能性は否定できません。