建設費は決着、次は維持管理費の確保だ

 
 白紙撤回になった新国立競技場のザハ案では、年間の維持管理費が30億円から40億円かかると言われていました。

 トップヘビーに翻弄されたとはいえ、8万人コンサートを年12回も開催して、必ず黒字になると、信じがたい収支案を固持するJSCに対して、憤慨していたあの頃を懐かしく感じます。

 しかし、今回の新案(A案)でも、完成後50年間の維持管理費を税抜きで約1千億円(年間平均20億円)になると、JSCから聞かされると、また同じ懸念を指摘しなければならないのかと憂鬱になります。

 大体、このような批判を受ける数字は、少なめに発表するのが常套手段ですから、到底これだけで済む訳がありません。将来的な大規模改修費も含めれば膨大になり、想像が付かないとの意見もあります。

 国やJSCは、建設費の大枠がすでに決着したとして、次は、維持管理費を、いかに安定的に確保できるか、危機感を持って検討し始めているはずです。

 すでに、下村前大臣からは、JSCに管理運営させず、民間事業者にゆだねる旨の発言が飛び出していました。

 しかし、PFIの運営権(コンセンション方式)を駆使しても、相当の経費を事業者に補填しないと、引き受ける民間企業はないでしょう。

8年後には、建設費を維持費に切り替える

 新国立競技場の建設費として確保した「特定金額」は、TOTO売上額の5%から10%(本当は30%以上)に変更しただけで、年間約100億円が自動的に生み出されます。これを「打ち出の小槌」と言わずして何と言うのでしょうか

 財務省とJSCが、一度掴んだ「打ち出の小槌」を簡単に手放すと思いますか。
 膨大な維持管理費を補填するために、この「打ち出の小槌」を維持費に切り替えることが魅力的なことはだれでも思うでしょう。

 なお、今回の法改正で、平成28事業年度から平成35事業年度までの8年間と定めているのは、建設費を確保するために限定した期間です。

 オリンピック・パラリンピックの終了後は、見直すとはありますが、廃止するとは明言していません。

 年間100億円は必要ないにしても、将来的な大規模改修費の積み立てを含めて、年間30~40億円くらいは確保するのではないでしょうか。

 いや、それ以上に、改修される代々木体育館や国立スポーツ科学センターの拡大にも、魅力的な小槌でしょう。とすれば、もっと必要になるかもしれません。

維持費にも都費の負担を求める危険性

 すでに、東京都は、新国立競技場の敷地内にある、約2万6千平方メートルの都有地(年間約6億6千万円)を、2020年までの間、国に無償で貸し出す方向で議会を通過させました。

 そのうえ、2020年後は、改めて話し合うと説明していますが、無償貸与を有料化すると言っていません。
 
 おそらく、「スポーツ・クラスター」として外苑の再開発を進めたい東京都に、国としても協力するとの建前で、都有地の無償貸し出しを続けさせる思惑が見え隠れします。
 
 東京都は、このような2020年以降の問題を棚上げしないで、都民に公開し今から議論すべきだと思うのは、私だけでしょうか。