ロシアスポーツ界はあまりにもひどい!
 WADA(世界反ドーピング機構)の第三者委員会報告書を見る限り、選手に対するドーピングの誘導、恐喝、賄賂、隠ぺいを、国(スポーツ省)ぐるみ、組織(ドーピング検査機関)ぐるみで、長年にわたって常態化し、世界をだましてきたことが露呈しました。

 また、この期に及んでなお、抗弁するロシアの悪しき体質は、オリンピックどころかスポーツ史に残るスポーツ破壊行為だといっても過言ではありません。

 IAAF(国際陸上競技連盟)のセバスチャン・コー会長は、必死にロシアの組織改革、体質改善を求めて、リオデジャネイロ五輪に間に合うように働きかけましたが、ほとんど奏功しませんでした。

 しかし、IAAFにも弱みがあります。前会長ディアク氏らがロシアと同調し金銭要求と恐喝、隠ぺいを繰り返したことが発覚し、ディアク親子ともども追放されました。
 IAAFとしても、前会長の犯罪がありますので、現在のコー会長は苦渋の判断だったと思います。

 また、プーチン大統領は逆ギレして批判を繰り返し、ロシア陸連は無罪だとしてCAS(世界スポーツ仲裁裁判所)に提訴するなど、ロシアは抵抗を続けています。
 
 いまや、ロシア選手が立ち上げり、俺たちは同調させられ騙されたとして、ロシア内部から革命並みの行動を起こさない限り、これほどの問題は外力だけでは解決しません。

◎ ロシア陸上選手の個人参加の根拠
 IAAFは、ロシア陸上界の組織ぐるみのドーピング問題について、理事会を開き、昨年11月にロシア陸連に暫定的な資格停止を科している資格停止処分を解除しないと決めました。
 そのため、ロシアの陸上代表チームは、8月のリオ五輪に出場できなくなりました。

 同時にIAAFは、潔白証明を条件に、個人参加の形で五輪出場が認められる可能性があることを示しました。正式には、IAAFの報告を受けたIOCが、個人の救済について議論することになっています。

 実は、オリンピック憲章に次のような規定があります。

44 招待と参加登録申請
 IOCにより承認されたNOC(ロシアオリンピック委員会)は存在するものの、特定の競技の国内競技連盟(ロシア陸上競技連盟)が存在しない国においては、IOC理事会と当該競技を統括するIF(IAAF)が承認した場合、NOCが個々の競技者のオリンピック競技大会参加登録申請を行うことができる。(青色は筆者)

オリンピック憲章(72頁)

 なお、オリンピックにおいて、過去にも個人参加が認められたケースは、いくつもあります。

 代表的には、現在のIAAFのセバスチャン・コー会長は、英国がボイコットしたモスクワ五輪に個人で参加して1500m金メダル、800m銀メダルに輝き、五輪旗と五輪賛歌で表彰台に上りました。

 日本でも、2004年アテネ五輪で、テコンドーの国内統括団体の対立騒動により、JOCは岡本依子選手の出場を認めなかったが、最終的には特例として個人資格を認めて参加した例があります。

◎ ウサイン・ボルトのリレー金メダルは剥奪されない
 報道では、「ジャマイカの陸上リレーメンバーのカーターがドーピング違反の確定を受ければ、チームメートだったウサイン・ボルトの北京のリレー金メダルも消える。」と言っていますが、それはありません。

 2000年シドニー五輪において、マリオン・ジョーンズ(米国)が、筋肉増強剤使用でメダル5個が剥奪されました。
 その際、400mリレーメンバー全員のメダルを剥奪されましたが、ジョーンズ以外の3名は、CASに不服申し立てをして認められ、3名にはメダルが戻されたことがありました。

 したがって、前例を基にすれば、ウサイン・ボルトのリレー金メダルは剥奪されないと思います。