マスコミでは、「錦織選手が、テニス競技で96年ぶりにメダルを獲得した!」と異口同音に報道されていますが、日本テニス協会や往年の名選手が聞いて、この言い方でいいのですか。

 なぜなら、オリンピックでのテニス競技は、近代オリンピックの途中60年間は実施されていないからです。経緯を紹介しましょう。

*第1回アテネ大会(1896年)から第8回パリ大会(1924年)まで、テニス競技が行われます。
*第7回アントワープ(1920年)大会で、日本人が銀メダルを2個獲得します。これが日本史上初のメダルになります。
*第9回アムステルダム大会(1928年)から、第23回ロサンゼルス大会(1984年)までの間は、テニスのプロ化傾向を受けて、IOCはオリンピック種目から外します。
*第24回ソウル大会(1988年)から正式種目として復帰し現在に至っています。
 
 オリンピック競技から外されていた60年間、当時の日本テニス協会や世界に通用する日本選手は、早く復活してほしいと願っていたのです。今の野球・ソフトボールの復活を希望していた関係者と同じでした。

 ですから、報道では、「9大会ぶりのメダル獲得」を合わせて紹介すべきではないでしょうか。

 今の「96年ぶり報道」だけを聞けば、日本人のほとんどが、96年間も日本のテニス選手はメダルに届かず、弱かったとイメージしていることでしょう。

 もちろん、今回の錦織選手の快挙に感動する気持ちとその栄光に一寸の曇りもないことは、言うまでもありません。

 しかし、今の時代に、自分が全盛期だったらと思う往年の選手もいることでしょう。また、テニス協会もやっとオリンピックに仲間入りしたと実感したことでしょう。

 これらの歴史を参酌すれば、報道の皆さん「オリンピック史上、96年前に初めて日本にメダルをもたらしたテニス競技で、9大会ぶりに錦織選手がメダルを獲得しました。」と紹介していただきたいと思うのは、テニス競技関係者も同じではないでしょうか。