リオ五輪の閉会式が盛大に終了した今、振り返ってみれば、大会前に懸念されていたことも、概ね杞憂に終わった感じで、総じてみれば大成功の大会と言えましょう。

 ただし、五輪開催の効果をどう評価するかは、まさにこれからです。
 
 あの、ギリシャのアテネ五輪(2004年)も、閉会式までは、さすが五輪発祥の地、素晴らしいオリンピックだったと評価されたものです。

 しかし、アテネ五輪は、後のギリシャ危機の引き金になったといわれています。当時のギリシャ政府は、アテネ五輪を口実に空港や地下鉄、高速道路などのインフラ整備に、国債を想定以上につぎ込んだことが原因です。

 また、わが国の長野冬季五輪においても、自治体規模を超える地方債の発行に頼り、その償還が、20年以上にわたり長野市民に多大な負担になったことは、周知の通りです。

 リオデジャネイロも、アテネの二の舞になるとはまだ言えませんが、ブラジル経済は決して芳しくなく、大会前から公務員の給与未払い騒動や、リオ財源の行き詰まりを国が財務保障するなどの話題は、大会が始まったら忘れられています。今後の反動を注意深く見守る必要があります。

 この問題に、最も注視しているのは、2024年大会に立候補を予定している、パリ、ブダペスト、ロサンゼルスの3都市です。

 なお、当初立候補を予定していたハンブルクは、住民投票で反対が多数を占めて、すでに取り下げています。

 また、ローマでは6月に当選した新市長が、立候補を取り下げると表明しました。
 その理由について、「市にはすでに130億ユーロ(約1兆5470億円)の借金がある。また、五輪招致には賄賂と汚職の歴史があり、その費用はとてもまかないきれない。」と報道されています。(この発言には、東京の五輪招致疑惑への懸念があるといわれています)

 さらに、すでに立候補しているブダペストも反対運動が強くなり、今後の見通しが立っていない状況です。

 小池知事は、先日、IOCバッハ会長と面会した際に、「経済的に豊かな都市でなくてもオリンピックを開催できるという持続可能性(サステナビリティ)を東京で示したい。」と発言しましたが、素晴らしい主張です。

 2020年東京五輪を準備する関係者は、肥大化するコストや巨大化する大会規模を、いかにして、スリムかつコンパクトに開催できるかを大会コンセプトにして、世界にその情報を発信すべきです。

 海外は、今日から4年間、東京五輪の準備過程とそのメッセージに、注視し続けます。

 その経緯の中で、日本と東京の経済力があれば、あのような豪華な大会ができるので羨ましい。我々の都市では、到底、あのような経費はかけられない、などと思われることがないよう留意しなければなりません。

 まさに、東京大会は、オリンピックの将来がかかっています。IOCが最も懸念しているオリンピックの持続可能性を決定づける大会になるといっても過言ではありません。