リオ五輪が開幕し、水泳競技で盛り上がっている8月7日に、IPC(国際パラリンピック委員会)が、リオパラリンピック大会からロシア選手を全面的に締め出すと通告しました。

 ロシア当局は、五輪の時と同じように「政治的陰謀だ!」と大反発して、CAS(国際仲裁裁判所)に即刻提訴しましたが却下されました。

 そして今度は、175人以上の選手が、同国代表でなく「中立」の立場での参加を求めていたましたが、昨日、同様に却下されました。

 オリンピックの時は、IOCの決断に世界が注目し、ロシア選手の「個人の権利」を救済すべきと、日本のマスコミや元五輪選手も主張する傾向が強かったのですが、今回は、IPCを批判・評価する声があまり聞こえてきません。
 2020年東京大会は、パラリンピックを重視する姿勢を世界にアピールしていた日本なのに、実際は、関心の温度差が大きいことがよくわかりました。

 私は、IPCの決断を評価します。加えて、IOCはなぜ、同様の対応が取れなかったのか、今でも大きな不満を持っています。
 両団体は別組織だから判断が分かれても仕方ないではなく、2020年東京大会に向けて、両団体が協議を重ね、今後のドーピング対策と問題対応を共有していくように望みたいと思います。

 今回のロシアのドーピング問題は、オリンピック・パラリンピックの存在を揺るがす深刻な問題であることを、もう一度振り返るために、私なりの例えで、考えてみてください。

 「全国(世界スポーツ界)に犯罪が蔓延したので、国(IOC)は、各県に警察署(WADA支部)を配置し、取り締まりの強化を指示してきました。ところが、ある県(ロシア)の警察署が、取り締まるどころか、犯罪者を見逃し、善良な市民に犯罪をそそのかしていた。」と同じことです。こんなことは、ありえないでしょう。

 そういえば日本でも、例え話になる問題が起こりました。

 先月、全国高校サッカー予選の大阪大会の開会式において、強豪シード校が顧問の日程間違いで欠席し、棄権扱いとなりました。
 ところが、この高校は強豪校のため注目され、保護者会が「選手たちに罪はない」として、大会出場への救済措置を求める嘆願書を提出しました。これが弱小高校であれば、話題にはならなかったでしょう。

 同様に、ロシアのドーピング問題も、メダルに縁遠い国であれば、IOCは歯牙にもかけず国の参加を失格にしたでしょうが、大国ロシアだから様々な影響に配慮したのでしょう。それこそが政治的判断ではないですか。

 この時、前任のロゲ会長であれば、どうしたでしょう。私はIPCと同じ決断をしたように思います。

 IOCの会長は、クーベルタン、ブランデージ、サマランチ、ロゲの各代で、IOCの対応が大きく変わってきました。この変遷については、またの機会にしましょう。