海の森水上競技場の建設を中止して、宮城県登米市の「長沼ボート場」に移すという案を、東京都の調査チーム「都政改革本部」から流れ、大きな話題になっています。

 改革本部は移転ありきとは言わず選択肢の一つと言いつつも、小池知事が、現段階で現地を視察し宮城県知事と会うと言われています。
 また、県知事はすでに決まったかのように、選手村は災害用仮設住宅を改良して使うとマスコミに発言しています。
 そうなれば、既成事実となり移転を前提とした準備変更になっていくのでしょう。手続きとしては、少し違和感を覚えます。

 ところで、海の森水上競技場に対する評価は、アスリートとNF(国内競技団体)それにIF(国際競技連盟)によって、思惑が異なります。

 アスリートは、最大のパフォーマンスを発揮するためには湖でやりたいと思います。当然です。

 NFは、都内に初めてボート・カヌーコースができて、五輪後も使えることから現行計画の継続に賛成しています。これもよく分かります。

 私が指摘したいのは、IFの動向です。すでに来日していた国際ボート連盟のロラン会長が、アスリートの評価が低い現行計画の続行を、なぜ強く希望するのでしょう。

 実は、ボート競技はイギリス発祥であり、英国人が愛する重要競技の一つです。それを東京都内ではなく、他競技に比べ最も遠いところに追いやられるとは、極めて理不尽だと考えたのでしょう。

 だから、現行計画を進めてほしいというわけですが、その上、ロラン会長は、イギリスのIOC委員は、ボート競技の開催場所を評価して1票を投じたのに騙されたとまで思っていてもおかしくありません。(なお、ロンドン五輪でも会場変更していますが、選手村を分村する距離ではありません)

 また、自転車競技(ロードレースを除く)も、都内で行われると思って1票を投じたのに、なんで、分村しなければならない、静岡県伊豆市の「ベロドローム(仏語で自転車競技場)」に追いやられるのかと抵抗しました。そのため、昨年、半年も承認がもめたのです。
 日本人の認識は低いのですが、自転車競技はフランス発祥であり、第1回近代オリンピックから行われてきた伝統とプライドの高い競技なのです。
 ですから、フランスが東京への恨みを現在も持っていることは想像に難くありません。

 実は、近代オリンピックはフランスの「クーベルタン卿」が立ち上げ、パラリンピックはイギリスの「グットマン卿」の医療が原点であることは、周知のところです。

 その、イギリスとフランスは、日本・東京に対して「おもてなし」とか「アスリートファースト」といっているけれども、我々のプライドを傷つける無神経な都市だと思っていることでしょう。

 しかし、東京都の五輪経費について指摘されている改革については、私自身も含め、これまで五輪準備に関係してきた、すべての団体・当事者は猛省しなければなりません。

 一方では、「都政改革本部」も、海外の関係者に十分な配慮と、丁寧な説明とお願いを尽くすことを忘れてはならないと思います。

 なお、今の変更提案については、次回にご説明します。