すでに、ボート・カヌー競技場と水泳会場は原案通りになり、バレーボール会場も有明に収まりそうな状況です。

 就任早々、小池知事と都政改革本部の調査チーム(上山特別顧問が主導)が、五輪施設の3施設について、建設コストと後利用を問題視して代替え案を主張するという発想は、間違っていなかったと思います。
 
 しかし、現在の配置計画に至った経緯や五輪施設に必要な条件、及び、都内や関東一円に存在するスポーツ施設状況について、十分な情報を得たうえで検討せずに、安易に代替え施設を提案したことが、大きな誤算を生んだ原因です。

 まず、水泳会場「アクアティックスセンター」の代替え案として、「東京辰巳国際水泳場」を出したときに、辰巳の管理運営に関与してきた一人として、これはひどい提案だと思いました。
 おそらく国際プールが隣接しているという情報だけで、施設の現場を見ずに発案したのだと思います。提案した調査チームが、あとで自ら引っ込めたように、辰巳プールは改修が絶対できない施設であることは、現場を見れば素人でも分かります。

 また、ボート・カヌー競技場の代替え案についても、宮城県長沼ボート場の一か所だけを復興五輪を旗印に提案し、埼玉県彩湖は最初から一顧だにしなかったのです。

 さらに、バレーボールとなる「有明アリーナ」の代替え案も、なぜ「横浜アリーナ」だけなのか、まったく理解に苦しみます。

 小池知事は、事あるごとに「最後は総合的に判断する」と断言しますが、その前に、必要な情報を得て総合的に判断して提案すべきでしょう。

 例えば、水泳会場は、前回の東京五輪の会場だった原宿駅前の「国立代々木競技場」に、旧プールが床下に現存しており、復元して使うことが可能です。
 もちろん、規格や機械設備が旧式ですから、すべて仮設(プールの仮設は実証済み)にする必要はありますが、新規格・機能でセッチングすれば数億円で済むでしょう。
 そうすれば、まさにレガシーの継承になり2回目の五輪開催のメリットをアピールできます。
 ただし、すでに決定しているハンドボール会場の確保が必要となる課題はありますが・・・

 また、バレーボール会場についても、駒沢オリンピック公園にある「屋内競技場」は、あの東洋の魔女が旧ソ連チームを破り金メダルに輝いた由緒ある競技場です。
 その会場が現在建て直し中であり、建設が少し進んでいますが、現段階でも多少の損金発生を覚悟しても、現計画に仮設席をセットし、五輪後は撤去して元計画に戻せば、水泳会場と同様にレガシーの継承となり経費削減も大幅に見込めます。

 他にも、いくつかの代替え案は考えられますが、なにしろ今回は、都政改革本部の調査チームが、最初から聞きかじりの情報(?)だけで、稚拙な代替え案を早々に提示して、墓穴を掘ったというところでしょう。

 一方、これまでの準備作業を主導してきた組織委員会にも問題があります。アジェンダ2020に沿って競技場の移動を工夫して、2000億円を削減したと豪語していますが、施設ごとの整備費については、削減努力をほとんどしなかったのです。さらに、東京都の甘い入札方式等にも問題がありました。これらを知事サイドから指摘されたことは当然であり、十分反省すべきです。

 このような議論を、対立構造のままで公開され、IOCを巻き込んで延々と見せつけている東京五輪の準備状況に、IOCは危機感を持ち、世界中のスポーツ関係者は苦笑して見ていると思います。