IOCは、近代オリンピックの開催を、国単位ではなく、一貫して都市にこだわってきました。

 しかし、オリンピックの規模は徐々に巨大化して、もはや財政的に一つの都市で開催できるイベントではなくなりました。大会経費はすでに、高GDPの国レベルでしか対応できず、名目は都市五輪ですが、実態は国五輪になっています。

 ちなみに、オリンピック夏季大会の歴史を見れば、1896年第1回アテネ大会の8競技で始まり、第2回パリ大会は16競技と倍増して、その後は、第18回東京大会の20競技を経て、直近のリオ大会は28競技まで増加しています。
 そして、2020年東京大会は、招致後に5競技が追加されたことで、なんと33競技まで増加しました。
 
 加えて、種目数についても、第1回の43種目からリオ大会では306種目に、参加国(地域を含む)数は、14か国から206か国に膨張しています。

 その競技や大会規模に必要な専用施設を用意しなければなりません。また、既存施設を活用するにしても、五輪用施設として必要な条件整備(仮設)は簡単ではありません。

 そのため、東京都以外の自治体が引き受けた競技施設に必要な仮設整備費は、施設ごとに30億円以上が必要とされており、千葉県の「幕張メッセ」に至っては、約88億円と試算されています。その総経費は、組織委員会によれば約277.2億円(7施設のみ)と試算されています。
 参考のために、サッカー会場だけは、五輪会場に中では例外扱いで、立候補段階から国内のどこで開催しても構わないことになっていました。依頼の仕方が異なることを承知しておいてください。

 そこで、東京都は、仮設経費の節減のために、仮設の定義を二つに分けて、個別の交渉に入ると言及しましたが、その点は、前回の「競技施設の恒久と仮設の定義は!」をご覧ください。

 そして、小池知事の放った次の一手は、「オールジャパン」というメッセージです。

 その真意・心情は、立候補ファイルでのコンパクト五輪は、確かに東京オリンピックでしたけど、その後の、アジェンダ2020への対応や追加種目(5競技18種目)の容認などによって、すでに、他の自治体に10以上の競技会場が移転している現状を意識して、「オールジャパン」を繰り返すようになったのでしょう。
 それに、リオオリンピックの閉会式では、安倍総理がマリオとなって出演して絶賛されたのだから、国が財政的にもっと支援してくれても国民は納得すると思いますよ、というのではないでしょうか

 小池知事は、そのことを踏まえ、名目は「東京オリンピック」で変えられませんが、実態は「日本オリンピック」になっています。したがって、経費の考え方も「日本オリンピック」として協議しましょうよ、というのが戦略だと思います。