2020年東京五輪・パラリンピックで実施される、東京都外の競技会場の仮設整備費約500億円について、都が全額負担することを小池都知事が表明しました。

 その経緯が、安倍総理や県知事の行動を絡めて、政治的な駆け引きになっていると報道されていますが、そもそもの五輪経費の基本的条件が語られていません。

 また、非開示といわれていた、IOCとの「開催都市契約(Host City Contract)」が「アジェンダ2020」に基づいて、奇しくも5月9日に公開されました。

 もう一度、2020年東京大会の開催条件を「立候補ファイル」と「開催都市契約」に照らして、費用分担の基本的条件を説明します。
 
 「立候補ファイル」の財源保証には、次のように書かれています。

 IOCの「大会組織委員会(OCOG)の予算が資金不足に陥った場合には、どのような方法とスケジュールで財政保証が発動されるのか、その仕組みを説明してください。」という質問に、

 「万が一、大会組織委員会が資金不足に陥った場合は、(中略)東京都が補填することを保証する。また、東京都が補填しきれなかった場合には、最終的に、日本国政府が国内の関係法令に従い、補填する。東京都は、大会組織委員会予算約3,010億円に対し、非常に大規模な財政規模(2012年度の予算で11.8兆円)を有しており、万一の大会組織委員会の資金不足に対しても十分に補填することができる。

と回答しています。

 この仕組みは、東京大会決定後の「開催都市契約」にも盛り込まれています。
 したがって、組織委の資金不足は、一義的に東京都が補填せざるを得ません。
 今に思えば、この仕組みが、今の財政問題を引き起こす混乱の元凶だったといえます。

 ちなみに、ロンドン五輪では、「開催都市契約」において、英国政府が、「会場建設委員会」と「組織委員会」の財政保証を担っており、両組織が資金繰りに行き詰った場合に、救済する義務を負うときめていました。その結果、英国政府は、五輪総経費の54%を出資し、ロンドン市は7%、組織委は17%の負担になりました。

 残念ながら、東京大会における日本政府は、会場建設と組織委の財政保証には関わらない仕組みになっているのです。

 ただし、IOCの「警備、医療、通関、出入国管理その他の政府関連業務のすべてを大会組織委員会が費用を負担することなく提供する旨の関係当局による保証書を提出してください。」との質問には、政府関連業務の無償提供として「日本国政府及び東京都は、大会組織委員会の費用負担なしに、大会に関係するセキュリティ、医療、通関、出入国管理その他の政府関連業務を提供する。」と約束しています。

 そのため、政府は国の責務としてセキュリティ対策を基本に、国でなければできない法整備や警備等を中心に、平成27年11月に「オリパラ基本方針」を閣議決定しているのです。

 そのなかで、施設整備については、国の施設である新国立競技場等の改修・整備以外は、政府の役割ではないとしています。さらに、五輪大会の運営に関する直接経費(開閉会式、競技運営等)は、組織委と東京都の責任であると定めているのです。

 ただし、パラリンピック大会については、「日本政府及び東京都は、パラリンピック競技大会の運営費用の50%を支援することを保証している。」と、「立候補ファイル」の中で約束しています。

 この保証をもって、丸川大臣は、「政府として25%の支援は心得ている」と発言するとともに、都側が国に肩代わりを求めた「開会式経費などの20項目」については、国の役割ではないと拒否しているのです。