IOCは、臨時理事会において、‘20年東京五輪の新種目を15増やすと発表し、バッハ会長は「東京五輪がより若者向きで、都会的で、多くの女性が参加する大会になることを喜ばしく思う。魅力的な新種目は五輪に変革をもたらす」と自慢しました。

 その結果、東京五輪での実施種目数は、すでに別枠で認められている5競技18種目を含めると、前回のリオ五輪から33種目が増えて、選手数は最大11、090人となる予定です。

 その内訳は以下の通りです。

リオ五輪 競技数(28)種目数(306)参加選手(10、901人)※許可人数
東京五輪 競技数(33)種目数(339)参加選手(11、090人)
 【本枠】競技数(28)種目数(321)参加選手(10、616人)※削減人数285人
 【別枠】競技数( 5)種目数( 18)参加選手(   474人)※東京大会のみ追加

 改めて、オリンピック憲章と、IOCが五輪改革として策定した「アジェンダ2020」の提言に定められている、種目数や参加者数の条件を見てください。

【オリンピック憲章】
 以下の概数が適用されるものとする。ただし、当該OCOG と異なる内容で合意した場合はその限りではない。
 *オリンピアード競技大会では選手10,500名、資格認定を受けたコーチおよび選手支援スタッフは5,000名、種目数は310

【アジェンダ2020】
提言10:競技に基づくプログラムから種目に基づくプログラムに移行する。
 1. 競技ではなく、種目に基づくプログラムとなるようプログラムを国際競技連盟も交え、定期的に見直す。その際、以下の制限を尊重する。
 ・オリンピアード競技大会:選手総数を約10,500人、資格認定を受けたコーチと選手の支援を担う人員の総数を約5,000人、実施種目数を約310とする。

 結局、東京大会は上記基準からみて、選手数は590人オーバーし、種目数は39オーバーする、史上最大規模のオリンピックとなります。

 その結果、開催経費が増加することは必定です。特に、バスケットボールの3人制は、日程的に別会場を確保する必要があります。さらに仮設等が追加になる種目もいくつかあります。
 さらに、種目数が増えたことでコーチ等の関係者数も増員されます。
 その上、輸送、宿泊、警備等々、すべての関係費も算定し直さなければならないでしょう。
 諸々を含めれば、経費増大は想像以上になると思います。

 IOCは、これまで事あるごとに、開催経費の縮減を厳しく求めてきましたが、一方で、大会規模をこのように肥大化させています。最近のIOCは、自己矛盾を起こしているとしか思えません。

 また、削減された285人の内訳は、ドーピング違反などを理由に、陸上競技105人、重量挙げ64人、レスリング56人、他競技60人となっています。

 確かに、オリンピック憲章には、「競技を統括する当該IFがオリンピック憲章、または世界アンチ・ドーピング規程を遵守しない場合、総会はいつでもいかなる競技でもプログラムから除外する権限を有する。」とありますが、種目ではなく競技の除外を指しているだけです。

 さらに、オリンピズムの思想にある「ソリダリティ(Solidarity)」は、アフリカ等の五輪参加後進国への支援ですが、そのような国が、最も参加しやすいのは陸上競技です。実際に、陸上競技だけで五輪参加している国は10か国に及びます。そのことも矛盾しているとしか思えません。

 今回の種目追加について、日本のスポーツ界は、メダル計画への有利・不利の思惑で一喜一憂していますが、組織委員会と東京都、地方自治体は、またも経費分担の火種を抱えたことになりませんか。