IOCが、東京五輪の追加種目を発表したことで、史上最大のオリンピック規模になり、その経費負担の増加について、前回はその懸念を示しました。

 なぜ、このようにIOCは種目数を増やしたのでしょう。その思惑を考えてみました。
 
 第一は、東京大会後の‘24年と‘28年の五輪開催都市が、パリとロサンゼルスにほぼ決まったことで、IOCは安心したのでしょう。そのため、開催希望都市の辞退を懸念していたIOCは、あれほど東京大会の経費膨張にクレームをつけていたポーズを翻して、経費加算が明らかな種目数や参加人数の追加を認めたのだと思います。

 第二は、IOCに巨額の放映権料を支払っている米国NBCの存在です。報道によれば、リオ五輪での米国の若年層の平均視聴率は5.3%で若者のテレビ離れが著しいといわれています。
 その証拠に、アメリカの若者に人気の高い、バスケットの3人制などストリート系種目が多く追加されました。

 オリンピックの若者離れに対する危機感は今に始まったわけではありません。
 前任のIOCロゲ会長がユースオリンピックを創設したのも、これが一因といわれています。

 第三に、東京都は、リオ州に比べてはるかに財政力があり、多少の経費負担が増加しても日本人が喜ぶ種目を紛らわせておけば、大きな反対にはならないだろうという思惑も見え隠れします。事前に、東京都の希望である5競技18種目に満額解答したのも同様です。

 ついでに、NBCの放送権料に関わるIOCに対する無理強いについて付記しておきましょう。

 NBCは、既に‘20年までの全米の五輪放映権を43億8000万ドル(約4800億円)で、IOCと契約済みです。その上で、22年冬季大会から32年夏季大会まで約76億5000万ドル(約7800億円)で契約しました。
 結局、長年にわたって独占している全米の五輪放映権をもって、IOCに放送時間等の要求を押し込んできました。

 特に、リオ五輪では、NBCの強い要望で、アメリカ国民が注目する、陸上男子100m決勝が現地時間の午後10時25分に設定されました。
 リオとアメリカ本土との時差は1時間~4時間で、全米各地のゴールデンタイムに合わせて、この時間が設定されたわけです。
 また、NBCは、開会式の入場順がポルトガル語(頭文字がE)では、アメリカの入場が早すぎるから、英語(頭文字がU)にして欲しいと要望するなど、IOCは巨額な放送権料の見返りに悩まされています。

 いうまでもなく、日本とアメリカの時差は著しく、どのような時間変更が求められるかわかりません。
 時差がほぼ同様のソウルと北京の大会でも、NBCから理不尽な時間変更がありその要求がまかり通っています。

 すでに、日本の真夏に行われるマラソンを筆頭に、酷暑対策に苦慮している競技時間の設定に、このような変更要求を受け入れていたら、競技自体が成立しない恐れもでてきます。
 組織委員会は、理不尽な時間変更等には毅然とIOCと交渉してもらいたいと思います。