今年の韓国は例年になく極寒になっていることは日本と同様です。すでに、平昌五輪は史上最も寒いオリンピックになると揶揄されています。

 さらに、平昌五輪の開会式が、9日の夜8時から10時の時間帯で開催されますが、1日中でも最も低温の時間帯に行うことに疑問が出ていますが、すでにその理由は知られています。

 IOCは、増加する五輪経費の開催都市負担を緩和するために、可能な範囲で負担金を出してきました。ちなみに、2020年東京大会では、組織委員会に850億円を拠出するとしています。
 さらに、五輪の独立性とIOCの主導権を守るためには、独自財源を拡大しなければならないとして、放映権料やスポンサー料による巨額の資金を確保するためにIOCは奔走してきました。

 しかし、その見返りに、放送側から巨額の放映権料を背景に、競技時間の変更や短縮を強要されており、今回の平昌五輪においても、最も寒い時間帯に開会することは、アメリカの放送大手NBCからの強い要請があり、IOCを通じて平昌に押し付けられたからです。

 NBCの親会社は、アメリカにおける五輪の放映権を、2032年までIOCから獲得し、その放送権料は約76億5000万ドル(約7800億円)といわれています。この結果、NBCは、これまでの放映権に加えて、夏季・冬季合わせ合計6回分の五輪大会の放映権を持っているのです。
 
 したがって、NBCはアメリカでの視聴率の確保が必須条件になることは当然です。
 例えば、今回の平昌五輪の開会式を、極寒である夜の8時に開会すれば、アメリカ合衆国との時差は、14時間から17時間遅れるので、前日(8日)の午後1時から4時までの時間帯に開会が放映できることになります。
 これが逆に、比較的低温が緩和される昼の12時に開会すれば、アメリカでは真夜中になり、視聴率は全く期待できません。

 2020年東京大会でも、夜に開会式が予定されていますが、逆に真夏ですから日本では好都合でしょう。ただし、水泳競技では、午前中に決勝戦を設定するように強要されており、日本水泳連盟は、選手のモチベーションが保てないとして、夜にするよう抗議をしています。
 世界の競技関係者は、最も大切な競技大会の不可侵を守り切れていないとして、IOCの姿勢を批判しているのは当然です。

 このようにIOCは、民間資金提供からの要求と、独立性と主導権を死守することが二律背反になっており、まさに自己矛盾に陥っているといっても過言ではありません。
 このような現状を指して、近年のオリンピックは、オリンピズムを歪める「商業オリンピック」だとして、世界から揶揄されているのです。