日本ボクシング連盟に関する呆れるばかりの疑惑が明らかになり、その批判が続いています。
 その影響でしょうか、2020年東京五輪において、ボクシング競技が本当に実施されるのか、あるいは、日本選手だけ出場停止になるのではと心配する声が出ています。

 実は、五輪におけるボクシング競技は、度重なる審判不正の疑惑があり、統括団体である「国際ボクシング連盟(AIBA)」のガバナンス欠如について、IOCは、長年にわたり問題視してきました。

 遡れば、1988年 ソウル五輪のボクシング競技において、疑惑どころか真逆の判定があり、3人の審判員が関わったとされる買収事件は、世界の五輪関係者を激怒させました。

 その後も、2004年アテネ五輪での審判スキャンダル、2011年ロンドン五輪では、買収に伴うメダル取引が判明しています。
 そして、リオ五輪でも審判疑惑が発生していました。このように、ボクシングの審判疑惑は、常態化していたといっても過言ではありません。

 IOCは、もともと、オリンピック憲章に、「IOC倫理委員会」の設置を定めており、倫理原則の枠組みを作成していました。
 しかし、ボクシング競技等の度重なる倫理違反を重く見て、2012年に、規程を強化した「IOC倫理規程」を、新たに制定したのです。(2016年、2018年に改訂)

 また、IOCは、2014年に策定した「アジェンダ2020」において、クリーンな選手を守るために2,000万ドルの資金を活用して、選手を保護する基金をつくりました。
 特に、試合の八百長、あらゆる種類の競技結果の操作、関連する不正のリスクについて、健全な教育を施し、問題認識向上プログラムを推進するため1,000万ドルを投じると決めたのです。

 それを受けて、2017年にオリンピック憲章を改正して、ドーピングの対応措置と制裁に加えて、新たに、試合の不正操作防止に関するオリンピック・ムーブメント規程を加筆しました。

 このように、ボクシングだけでなく、様々な競技において試合の不正等の疑惑に対応するために、IOCは、着実に規程を整備してきたのです。

 そして、今年の2月、IOCバッハ会長は、AIBAに対して、分配金の支払いを停止し、「2018年ユース五輪(10月)」と「2020年東京五輪」の実施競技から除外する可能性を示唆しました。

 5月のIOC理事会では、2018年のユース五輪の競技承認は7月に判断して、2020年の東京五輪の除外問題は、継続審議と決めます。

 さらに、7月のIOC理事会では、今年10月、ブエノスアイレスで開催される夏季ユース五輪でのボクシング競技は実施を決定しました。しかし、2020年東京五輪の除外は、11月末から12月初めに東京で開催されるIOC理事会で決めると先送りしています。

 なお、日本連盟に対しては、JOCと日本スポーツ協会(JSPO)が、第三者委員会を20日までに日本連盟によって設置し、9月28日までに調査結果と改善案を報告せよと命じています。

 そのため、IOCバッハ会長は、AIBAの組織改革を踏まえて、12月にも判断しようとしていたボクシング競技の除外判断に、日本連盟の調査結果と改善案の成り行きを加えなければならない状況になっています。

 それでは、どのような最終判断をするのでしょうか。少なくとも、そのポイントを整理してみます。

 まず、JOCは、第三者委員会の報告を判断して、国民の反応はもとより、スポーツ庁や日本スポーツ振興センター(JSC)、JSPOの意見を踏まえて判断すると思いますが、ここが第一ポイントになります。
 しかし、連盟の対立構造が根深く、違法捜査も想定される事案まで含まれており、この報告書で終息はあり得ないと思います。

 次のポイントは、JOCとJSPOは、加盟団体規程に基づき、団体を「資格停止」にして、さらなる大刷新を求めることになります。さらに、JSCも団体交付金の適正化を調査すると思いますので、時間はかかると思います。

 そのため、12月初旬のIOC理事会までに、団体の資格停止が解除できるか、第三のポイントになると思います。

 一方、IOCは、12月理事会において、AIBAの改革が終了したと判断して、日本連盟の資格停止が解除されていれば、東京五輪でのボクシング競技を認めるとは思いますが、この割合は低いと思います。
 IOCの判断は、まだ、AIBAの改善を見極める必要があるとして、再度の継続審議にして、JOCの取組を助けるために、猶予時間を与える公算が高いと思います。

 しかし、あまり引き延ばすことは、五輪準備に支障をきたすことが懸念されますので、IOC理事会は、ほぼ2ヶ月単位で開催されていますので、来年の早めの理事会を最終判断とするのではないでしょうか。

 なお、IOCは、AIBAの復権は回復させて、日本連盟を除名にして出場禁止とすることは、あり得ないと思います。

 あのバッハ会長は、ロシアの国ぐるみドーピング問題や北朝鮮の参加問題に対して、異論を受けながらも政治的手腕(?)を発揮した経緯があります。バッハという人物は、落としどころを作ることに長けたリアリスト(現実主義者)なのです。

 ギリギリまで、最善を求めてブラフやプレッシャーをかけ続けて、最後は落としどころを作るような気がしてなりません。

 ただし、最悪の落としどころは、ロシアドーピング問題を解決しないまま「ロシア出身の選手」として個人参加させたように、日本連盟を資格停止あるいは除名にしたまま、日本選手だけはJOC派遣の選手として出場させることです。それでも、開催国の選手であり、JOCや日本が非難対象になっているわけではないので、表彰式で国旗国歌を外させることまでやらないでしょう。なにしろ、あのバッハ会長ですから・・・

 いずれにしても、ボクシング競技が排除される懸念は残っているものの、日本選手だけが出場できないというケースはあり得ないと思います。

 最後に、これは酷暑下での私論であることは言うまでもありません。