一般財団法人全国剣道連盟の居合道部門において、昇段審査に金銭授受が常態化していた問題が告発され、またぞろスポーツ界の恥部が露呈しマスコミをにぎわせています。

 いまや、スポーツ団体は「社会の公器」であり、法人になった時点でスポーツ団体は、「社会の公器」団体として認証されたという自覚があまりにも薄く、情けない話です。

 旧来の狭い「部分社会」であれば、ある程度容認されていた悪しき慣行が、いまや社会通念上許されないことを理解できない組織及び幹部が多すぎます。

 今回の居合道の綱紀問題にしても、全国剣道連盟は、平成29年11月に処分をしていると情報公開しましたが、その内容は危機意識のなさを露呈させています。
 文面によると「個人会員資格ないし称号・段位の自主返上・停止などの綱記処分を行いました」といいながら、「なお、対象となった元審判員等が金銭授受を素直に認め、深く反省していることから一定期間その処分の執行を猶予する」としています。そのうえ、金銭受領の返還などは求めていません。処分とは名ばかりです。

 これまでの、アメフト、ボクシングと同様に注目度の低かった旧態依然の団体ほど、暴力やハラスメントだけでなく、不正受給、審判不正、組織的隠ぺいが蔓延し、ガバナンス崩壊、反インテグリティのレベルどころか、検察の捜査対象になる事案まで発生させたとしても、団体内部の危機管理認識は極めて低いままといわざるを得ません。

 かつて、松下幸之助が、「企業は、社会の公器である。したがって、企業は社会とともに発展していくのでなければならない」と公言し、「会社法」も平成17年に成立しています。また、中小企業団体法、労働災害防止団体法などもすでに機能しています。

 ところが、スポーツ界は、平成23年に、やっと「スポーツ基本法」を成立させたものの、5年も経っているにもかかわらず、この理念法に基づく実定法(個別法)がひとつも制定されませんでした。今年、五輪に不可欠なため反ドーピング法がやっと成立しましたが、それ以外は検討もされていません。
 早急に、スポーツ界は、スポーツ団体を「社会の公器」として表明し、スポーツ団体の統治や情報開示の制度化、競技上の安全管理を共有する賠償・保障等の共済制度などを盛り込んだ「スポーツ団体法」の策定を働きかけるべきではないでしょうか。