ジャカルタ・アジア大会中に、男子バスケットボールの日本代表4選手が起こした買春行為に対して、批判が集中しています。極めて不適切であることは言うまでもありません。

 なぜ、起こしてしまったかという指摘も様々です。私の第一印象は、元来プロ選手だから、試合で最大のパフォーマンスを発揮して責任を果たせば、後は私人としての時間だという勘違いがあったのではないかと思います。

 今回の行動規範問題に対して、日本選手団の山下団長は、真っ先に記者会見を開いて陳謝し、即座に当該4名を強制帰国させました。
 また、日本バスケ協会の三屋会長も、4人の記者会見に同席し、監督責任を謝罪したことは、組織のトップとして適切な対応だったと評価できます。

 これまでに、スポーツ界で連続的に発生していた、女子レスリングやボクシング団体、日大アメフト部などの組織ガバナンスの崩壊が批判されてきたことを相当に意識して、危機感を持って迅速かつ適切に対応したのだと思います。

 2020年東京五輪において、日本のバスケットボール競技が、出場枠をいまだ確保できていたい時期に、国際バスケットボール連盟(FIBA)が、この対応を評価しましたので、ひとまず安堵したのではないでしょうか。

 ただ、疑問点もありました。三屋会長は、謝罪の後に、当該選手に対して「つぶしてしまっていいのかは別の問題。またもう1回、敗者復活のようなものがあるとしたら、作ってあげたい」と話しましたが、今ここで言うことではありません。

 また、1人の選手が、山下団長より「人生は七転び八起き」と声をかけられたと、謝罪の中で話すとは言語道断でしょう。
 山下団長もまさか謝罪現場で披歴されるとは思わなかったとしても、今の段階で、そのような声をかけたとすれば、少し甘いといわざるを得ません。

 このふたつの言質を聞かされた国民は、なんだか形式的な謝罪と処分だったのではないかと疑念を感じてしまいます。

 次に、スポーツ庁の鈴木長官が、「これまで各競技団体を信頼してきたが、いい方向にいかない。国、我々がどこまで介入すべきか、もう1度考え直す」旨の発言をしたことで、政府介入をするつもりかという懸念の声も一部聞こえました。

 いうまでもなく、鈴木長官は、日本のスポーツ史に汚点を残した、モスクワ五輪への日本選手団の派遣中止を命じた政府介入と、同様のイメージで発言したわけではありません。

 これまでの日大問題や、ボクシング問題に対する鈴木長官の発言が、「他人ごと」「手ぬるい」など、自分への批判を意識したのかわかりませんが、今回は「競技団体は信用できないので、我々が介入することを考える」と踏み込んで批判したつもりだったのでしょう。

 しかし、「介入」という言質は誤解を招く可能性があると肝に銘じておいたほうがいいと思います。

 このような不適切事案に関しては、「我々が介入する」と憤るよりも、まずは、これまでの自浄能力のなさを露呈させたスポーツ組織の対応に比べて、山下団長、三屋会長の迅速な対応について評価する発言を優先すべきだったのです。

 組織トップの発言は、一言一句評価されます。ボクシング協会の前会長の発言は論外ですが、スポーツ界トップの発言意図が曲解されて、批判されてきた事例は少なくありません。気を付けましょう。