11月30日と12月1日に、IOC総会と理事会をはじめ、関係する会議が、東京都で開催されました。

 そこで最も注目されたのは、ボクシング競技が東京五輪で除外されるかの判断でしたが、結果的には、国際ボクシング協会(AIBA)への分配金を現状通り凍結したまま、来年6月の総会まで結論を先送りするというものでした。その間、東京五輪での準備はできませんが、ボクシング会場は「両国国技館」のため、来年6月まで判断が伸びても、準備にほとんど影響がありません。そのことは組織委員会からIOCに伝わっていたはずです。

 さかのぼると、ボクシング競技は、1988年ソウル五輪での「審判買収事件」や、2011年ロンドン五輪での金メダル買収事件など、様々な疑惑が明らかになり批判されていました。

 そのためIOCは、「IOC倫理規程」を次々と強化して、IFの承認取り消しや五輪からの除外規定を明確にしてきたのです

 さらに、2014年に策定された「アジェンダ2020」の提言の中には、クリーンな選手を保護するため、IOCが2千万ドルで基金を作り、試合の八百長、あらゆる種類の競技結果の操作、関連する不正のリスクに対応すると決めています。

 また、2017年には、オリンピック憲章を改正し、規則59(対応措置と制裁)のドーピング制裁に加えて、試合の不正操作防止に関する規程を加筆しています。

 その上で、IOCが、五輪でのボクシング競技開催を剥奪すると何度AIBAに警告しても、会長等はまったく危機感を感じていないのが現状のようです。

 そのため、先日の理事会では、ついにIOCの競技部長は、前述したIOC規定に則り、「ボクシング競技と選手は保護するべき」と述べ、今後のAIBAの処遇にかかわらず、東京五輪でのボクシング実施へ向けて取り組むと本音を吐露したようです。

 もし、AIBAの承認を取り消した場合は、一時的に別の競技団体を立ち上げて選手を参加させる方法を検討しているといわれています。

いわば、ソチ五輪で問題となった、ロシアの国ぐるみドーピング疑惑の際に、クリーンなロシア選手だけを個人参加させた、あの考え方によく似ています。

 ここまでのIOC判断は、私にとって想定通りでした。

 しかし、東京五輪でのボクシング競技が、なんとか開催されたとしても、今回は、AIBAも黙っていないでしょう。五輪に出場した選手だけでなく、コーチや審判員に対して、除名や資格はく奪などの強権を発動し、IOCに抵抗しかねません。AIBAは、会長選挙の際にあれほど批判や疑惑のあった現会長を、悠々と当選させる組織体質だからです。

 そうなった場合、アマチュアボクシングの選手・コーチ・審判員にとっても、オリンピックだけが競技会ではないので、どのように反応するか予想がつきません。ここがロシア問題と異なるところです。

 来年6月までに、どのような駆け引きが行われるか、注視する必要がありそうです。