スポーツ審議会のスポーツ・ガバナンス部会が進めてきた、NF向け「ガバナンスコード(以下、Gコードという)」は、NF対象だけでなく、都道府県体育協会等からも意見聴取を行い、過日、行政手続法に基づくパブリックコメントを終了したところです。

 おそらく、来月にはスポーツ庁に答申されるものと思われます。

1 トップリーグ機構の役員改選に違和感!

 先日、Jリーグ、ラグビーなど団体球技の全国リーグで構成する、「一般社団法人日本トップリーグ連携機構(以下、トップ機構という)」の役員改選が行われました。

 このトップ機構は、2005年に設立され、初代会長の森喜朗氏の後継として、現在は川淵三郎氏が会長に就任しています。今や、ボール系の競技団体からみれば、リーグ戦の強化や運営に大きな影響を及ぼすとして、JSPOやJOCへの加盟より重視されている組織です。

 その組織が、今回の役員改選にあたって、スポーツ庁が進めているGコードの主旨など、まったく眼中になく、森喜朗名誉会長(81)、川淵三郎会長(82)をはじめ、副会長の張富士夫氏(82)、麻生太郎氏(78)と、専務理事の市原則之氏(77)も全員留任したのです。驚くべき高齢な履歴者が堂々と君臨しています。

 まさに、スポーツ界の組織改革には、我々が重しになるべき時期であり、まだ若いものには任せられないというメッセージなのでしょう。

 Gコードの「原則2」では、「(3)役員等の新陳代謝を図る仕組みを設ける」として、「①理事の就任時の年齢に制限を設けること」となっていますが、私は、「意味不明であり、なぜ年齢を例示しないのか (「その1」を参照) 」と疑問に思ったのですが、関係者は「年齢を例示すれば、差別になる」と漏らしています。

 まさか、トップ機構の役員改選を忖度したわけではないと思いますが、少なくとも、スポーツ庁は、日本のスポーツ界にGコードの方向性を敷衍して適用しようと努力しているはずです。逆鱗に触れることを承知でも、トップ機構に対して注意喚起すべきではないでしょうか。

 現在のGコードは、確かにNF向けですが、 都道府県組織やUNIVAS(大学スポーツ協会)などにもGコード活用を促している現状を踏まえれば、まずもって、JSPOやJOC、JPSA等の統括団体はもとより、トップ機構も含めて、率先して範を垂れるべきです。

2 日本水泳連盟の役員改選にも違和感!

 スポーツ庁鈴木長官の出身母体である日本水連は、役員候補者選考委員会を開き、6月の役員改選において、2期目となる72歳の青木剛会長を続投させると決めたようです。水連の規定によると、理事就任時の年齢は70歳に制限されていますが、実は2年前に、会長経験者だけを例外にすると改定していたのです。

 おそらく、1947年1月生まれの青木氏は、鈴木会長から2年前に引き継ぐとき満70歳直前であり、旧規定のままでは、東京オリンピックまで会長を続けられないため改正したのではないかと憶測します。おそらく、名コーチとして功績を成した青木氏は、余人をもって代え難しだったのでしょう。

 確かに2年前の規定改正ですから、今回のGコードに何ら反するわけではありません。しかし、Gコード「原則2」の就任時の年齢制限や、改選の回数制限が議論を呼んでいる最中に、例外措置の是非と範囲が問われそうです。

 Gコードの結論を注視しているNFの中には、いい前例だとして、密かに考えているかもしれません。例えば、会長を就任時の年齢制限を外すだけでなく、副会長も外すとか、会長だけは再選回数を増やすなど、役員規約の特例措置を、Gコード適用前に予め改定しておけば、継続延長ができると考えるNFが増えてもおかしくありません。

 なお、役員改選には、独立した「役員候補者選考委員会」を設置すべきと、Gコードに定められていますが、NFから依頼を受けた委員会が十分機能するか極めて疑問です。

 この期に及んで、このようなトップ機構や日本水連の人事が公表されると、先々、Gコードの遵守に係るNFの「自己説明ー公表」に対して、統括団体が「原則2」の適合性を審査する際に、役員に対する特例措置を問題視することができるのでしょうか。

 いずれにしても、弥縫策に終わらないよう願いたいものです。