今月に入って、新国立競技場を報道陣に公開しましたが、後利用については、またぞろ再考されるようです。マスコミは建設現場で完成に向けた取り組みを評価していますが、一方で公表された後利用問題については、あまり問題視していないようです。おそらく、やっと盛り上がってきた五輪前に国民の期待感を削ぐようなことはしたくないのでしょう。

 この建設計画は、最初からトラブル続きで、幾度となく変更されてきました。これほど場当たり式で、一貫性のない公共工事は、見たことがありません。

 さて、今回の「陸上競技機能の存続案」は、コンセンション方式(運営権売却)の事業者募集の一助であることは確かですが、もっと効果的な「奥の手」が用意されています。

 私は、すでに、2016年5月の段階で、TOTOの収益金を新国立競技場の建設費に流用したことを批判するとともに、建設終了後は、維持管理費に振り替える危険性を指摘していました。

【参照】「 TOTOの売上10%は、収益20%というトリック(コチラ)」「新国立競技場の新たな整備財源の危険性」(コチラ)「 国の関心は、建設費から維持管理費の確保へ(コチラ)」 をご覧ください。

 すでに、新国立競技場の建設費として確保した「特定金額」によって、年間約100億円以上が自動的に補填されています。

 この建設費は、2016年度から2023年度までの8年間と定めていますが、この建設費を維持管理費に振り替えることを、 全額と言わないまでも、必ず 画策しているはずです。この件は、すでに財務省からも指示が出ていて、当初からJSC(日本スポーツ振興センター)は想定していたと思います。

  おそらく、通常のコンセンション方式では、名乗り出る事業者は皆無でしょう。そこで、大規模改修や長期保全等の経費などを、JSCが保障するという条件付きの運営権になることは想像に難くありません。

 また、 すでに、東京都は、新国立競技場の敷地内にある、約2万6千平方メートルの都有地(年間約6億6千万円)を、2020年までの間、国に無償で貸し出しています。その先には、運営事業者との間で、固定資産税などをキチッと徴収することを、我々都民は見届けなければなりません。

 新国立競技場の問題は、まだまだこの先、紆余曲折が懸念されるうえに、2020年東京オリンピック・パラリンピック大会における、負の後日談として、後世に伝えられることになるでしょう。情けない話です。