東京五輪・パラリンピックの開催に向けて、様々な懸案事項に、組織委員会、東京都、国等がそれぞれの立場で対策を進めてきました。

 大会まであと1年、残された最大の課題は、暑さ対策と選手・役員等の輸送問題です。

 暑さ対策のほうは、これからも経費抑制に配慮しながら、次々と対策を加算すれば評価されるだけで比較的容易です。

 一方で、五輪関係者の輸送問題は、都市機能への悪影響を最小限度に抑えるため、道路上の渋滞、遅延を抑制、制限できるかであり、負の軽減という難しい調整をしなければなりません。すべての関係者から評価される対策は極めて難しいといえます。

 今回の交通制限をシミュレーションする主題は、首都高の料金所における、封鎖、ブース数制限、時間制限等の組み合わせが注目されています。

 しかし一方で、環状7号線においては、都心方向に流入する車の通行を制限するために、青信号時間を短縮して渋滞させるというのですが、 この対策には、極めて大きな違和感を覚えます。

 これで、都心への流入車両が減少すると考えるのはあまりに安易です。

 もし、五輪本番で、このような信号による渋滞を誘導すれば、首都高などの高速道路を締め出され、一般道に流出した車両の不満は頂点に達し、幹線道路から、う回路を探して周辺の生活道路を埋め尽くす危険があります。

 さらに、その懸念を抑えるためとして、生活道路を封鎖すれば地域住民の不満が沸点に達することは間違いありません。

 いずれにしても、組織委員会が取るべき対策は、選手・役員等の輸送を首都高で優先走行させてもらう代わりに、環状7号線などを走行せざるを得ない車両に配慮するため、逆に、車両側の青信号を通常より長くして、流れを少しでもスムーズにすることで不満を緩和すべきです。

 なお、歩行横断者の不満を軽減するためには、可能な範囲で歩道橋利用に誘導したり、歩道橋使用が困難な市民には、ボランティアがお手伝いするよう手配するなどの理解を得ることも忘れてはなりません。

  オリンピック・ファーストを強調して、生活者や地元経済に過剰な負担と協力を強いるのは逆効果になり、批判を増幅されかねません。

 このように、やむを得ない「負の分担」という対策には、利害関係者の負担感覚を可能な限り、公平化・平等化することが成功の秘訣です。