今年の通常国会が始まりました。

 スポーツ関係者が注目すべきは、バスケットボールBリーグを対象にした「スポーツ振興くじ(以下、toto)」の創設案が、スポーツ議員連盟によって議員立法で提出されることです。

 周知のように、平成12年から始まったJリーグ試合の通称totoは、今やワールドカップや海外リーグの試合も対象にして巨大な販売体系を構築しています。その売り上げは、紆余曲折を経ながら、現在は概ね1千億円で推移していますが、すでに売上額は限界に達しています。

 その上、払戻金50%を除く収益金の使い道は、toto創設の目的であったスポーツ助成財源には、総売上金の約20%にしか割り当てられず、財務省が国庫納付として約10%をしっかりと確保してきました。国庫納付はtoto創設の条件だったのです。

 ところが、平成25年度からは、新たな国立競技場の建設費を補填するため、総売上金額の5%を「特定金額」として確保した上で、なお不足分を補充するためとして、平成28年度からは、10%に引き上げ8年間確保するよう法改正して現在に至っています。

 この件について私は、平成28年に紹介していますので、参照してください。
  「totoの売上10%は、収益の20%というトリック
  「新国立競技場の新たな整備財源の危険性

 一方で、totoのサッカー対象は、限界へ達することが早々に分かっていたため、財源対象を増やすために、プロバスケットBリーグとプロ野球をtoto対象にしようと、ずっと交渉してきたのです。

 なお言えば、Bリーグの設立を急いだのは、早くtoto対象にしたいためと言っても過言ではありません。

 そしてこの度、スポーツ議員連盟の強い働きかけを受け、Bリーグはスポーツ庁が進めるアリーナ改革の促進を期待して、toto対象となることを承諾したのです。

 一方、プロ野球の日本野球機構(NPB)は、過去に八百長事件があったために、当初は慎重論が強かったのですが、野球人気の低迷を受けて背に腹は代えられず、くじ収益金のNPB取り分を増やす交渉を条件にtoto対象へ前向きになってきました。しかし、JSCは、JリーグやBリーグとの釣り合いが取れないことから、交渉が頓挫しているのです。

 一方、スポーツ議員連盟の会長でもある麻生財務大臣は、20年東京五輪・パラリンピック終了後からのスポーツ財源は、国費を引き上げて、toto売上に移行するよう仕掛けてきました。それは、五輪大会の開催が決まってからの流れです。

 さらに、輪をかけて財源が必要になったのは、新しい国立競技場の維持管理費です。現段階で年間の維持管理費が約24億円かかると報道されていますが、この数字は、着工時点で、設計、工事を担うJVが試算したもので、あのような木材をふんだんに使った施設では、施設維持費が年々膨れることは容易に想像できます。

 ですから、いくらコンセンション方式(運営権の売却)で民間事業者を募集しても、国の補填がない限り名乗りを上げる企業はないでしょう。そこで、財務省は、totoの売上を倍増して、運営資源の補填にも使おうと考えているのです。

 しかし、toto販売対象が急激に増えたために困っているのは、これまで地方自治体の自主財源になってきた「年末ジャンボ宝くじ」などの「自治宝くじ」です。もともと、宝くじを定期的に買う国民は限られています。その一つのパイに、totoが参入してCMを拡大し、かつ販売規模をどんどん増やしていけば、「自治宝くじ」の売上げがさらに減少することは目に見えており、地方自治体が反発するのは当然でしょう。

 そういえば、麻生財務大臣は、オリンピック種目にもなっているゴルフに、贅沢税ともいえる「ゴルフ場利用税」をかけている時代ではないとして廃止を提案していますが、いうまでもなく、地方自治体にとっては大切な地方税です。これについても、ゴルフ場を有する自治体からは反発を受けています。

 今後のスポーツ財源の確保については、totoの肥大化だけに頼るのではなく、様々な優遇税制の創設やクラウドファンディング(CF)等による寄付支援の活用などを含めて、もう一度、多面的・多機能的なスキームを検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。