12日に、東京五輪の聖火採火式が、ギリシャ・オリンピア遺跡のヘラ神殿跡で、無観客ながらも行われましたが、ギリシャ国内での聖火リレーは中止されています。

 この採火式は、東京オリンピック・パラリンピック大会の始まりを象徴する儀式であり、大切な節目のひとつなのです。

 ここまで、IOC、組織委員会、開催都市東京、日本政府のトップが、「予定通りに開催する」と異口同音に強調し続けてきたことは、当然のことです。この式典の前にトップから懐疑的な発言が出れば、採火式の強行に対して、世界から違和感が噴出しかねません。

 しかし、採火式が終わった直後に、米国のトランプ大統領が「一年間延期すべき」と記者団に答え、IOCバッハ会長は、ドイツ放送のインタビューで、予定通りの開催を主張しながらも「WHOの助言に従う」と答えました。

 第二ステージのざわめきが始まりました。なにか、ドラマの筋書きを見せられているようです。

 次の争点は、本当に予定通り開催するのか。そのための対策は何ができるのか。それとも、延期するのか。延期時期は1年後か2年後なのかに絞られると思います。

 それ以外の、中止と年内のスライド案は、選択肢にないことは前回も書きました。

 もちろん、今後の新型コロナの世界的な感染拡大と終息状況が、最も重要な判断条件になることは言うまでもありません。現段階は、専門家の多くが想定している事態の推移を前提に考えることは当然です。

 また、バッハ会長が委ねた、WHOの判断が注目されることになりますが、バッハ会長は委ねた以上、WHOに対して、唐突に発言せず事前に必ず相談するよう、釘を刺しているはずです。

 まず、今夏に強行する場合は、60日前までには決断しなければなりませんから、最悪でも、5月上旬には最終判断することになります。なお、前回、6月に予定されているIOC理事会と書きましたが、これは、五輪正常開催における最終チェックの会議予定ですので、今回の開催是非を問う理事会ではありません。

 そこで、現段階の私見としては、2つの結論を想定しています。

 第一に、今夏に開催を強行する場合は、IOCから「無観客(特に、屋内競技)」「完全・完璧な選手村の感染防止策」「安全なバス輸送」を、一方的に押し付けてくることは確実です。

 さらに、いかなる国の選手・役員も入国を拒否しないことをIOCから要請されます。

 しかし、日本は、徹底的な検疫で選手や役員の感染疑惑を見極めて、入国可否を本当に判断できるのでしょうか。

 五輪会場や選手村で感染者が確認された場合は、大会や競技の中止・変更はあるのか、その判断はIOCが単独でするのでしょうか。

 また、感染選手の母国から、政治的な判断だとか、開催を強行した日本に批判が増幅するなど、気が遠くなるような想定に対処しなければなりません。本当にできますか??

 もし、パンデミック認定の終息が宣言されないままに開催を強行して、競技や大会が中止になった場合は、近代オリンピック史上最悪の大会として歴史に残ることになります。

 したがって、私見の結論は、1年先の同時期に延期することが、現段階での最善策であることは変わりありません。