五輪・パラリンピック開催を、今年の9月~10月へ年内延期することは、極めて危険です。

 これまでは、アメリカの放送権を取得しているNBCから協力を得られないことだけで主張してきましたが、秋期開催が不可能な理由は、他にもたくさんあります。

 特に、感染症に関する専門家の見解は、今の感染拡大が中国や日本において終息に向かっても、これから欧米がピークを迎え、続いて、アフリカ、南米、オセアニアなどの南半球に波及するとの予測が主流です。

 今年の9月や10月に延期しても、日本側が準備してきた、完全な形での五輪・パラリンピック大会の開催を成功させることは、不可能だと分かりそうなものです。

 すでに、感染症専門家からは、9月の段階では、日本国内の感染拡大が終息していても、五輪マークの5大陸から選手・役員に対して完璧な検疫は難しいと指摘しており、まして、世界各地から大量の観光客を受け入れることは、感染の逆輸入になる危険性が高いと公言しています。

 また、大会期間中で、選手村や競技会場で感染者が出た場合には、中止するのですか。それとも継続するのですか。さらに、五輪後に控えているパラリンピックは開催できるのですか。どちらにしても、オリンピック史上最悪の大会として、悪しき判断だったとして語り継がれることになります。

 さらに、日本国内の感染が終息していたら、やっと普通の社会生活と経済活動に戻って安堵している日本人が、このような危険性のある五輪開催を歓迎するどころか、反対運動が巻き起こり、第二の経済低迷のるつぼに落ち込むことになりかねません。

 IOCバッハ会長の頭には、IOCとオリンピックを守る選択肢しか浮かんでいないのではないかと疑いたくなります。もし、バッハ氏自身の想定以上に悪条件が推移すれば、 直前に2度目の延期は絶対できませんから、必ず「無観客会場」を命じてきます。火を見るよりも明らかです。否、秋期開催を条件に、最初から無観客を前提として、押し付けてくることも十分考えられます。

 しかし、すでに言及しているように、日本経済にダメージを与える「無観客」だけは避けたい日本側が、IOCに抵抗できますか。マラソンの札幌移転のようにまったくできません。

 国内でも、秋期に開催すべきとの意見が多くありますが極めて遺憾です。

 なお、昨日、アメリカ水泳連盟が、東京五輪の1年延期を主張するよう求める書簡を公表しました。トランプ大統領をはじめ、アメリカの世論とスポーツ界は、1年延期説に傾いているようです。開催を2~3か月下げただけでは、アメリカ選手が大挙して出場辞退することが想定されます。

 もう一度断言します。今年の秋期に移動させて、東京オリンピック・パラリンピックを強行すれば、IOCより日本が大打撃になる危険があります。

 いまや、IOCの判断を待つのではなく、日本側から1年延期案を提案し、3月26日からの国内聖火リレーを中断して、4月頃と予想される実施時期の最終判断を待つべきです。(聖火の多コース分離案は、【第10編】をご覧ください。)