東京五輪は、「来年の1月から8月まで」のどこかに延期することで、やっと決着しました。私は、かねてより1年延期を訴えてきたことに間違いはなかったと、ホッとしています。

 しかし、安倍総理が「8月までに開催」とIOCに提案した意図は、主に米国と欧州に向けて、放送権が絡むスポーツシーズンの秋期には開催しないと明言しただけと思っていました。ところが、安倍総理の「8月まで」発言の中に、春開催の思惑が含まれていたのでしょうか。

 1年以内の延期が決まったとたんに、欧州のIOC委員が「桜五輪」はできないかとか、IOCバッハ会長も選択肢のひとつに入っているかのような発言が出たことに驚きました。

 また、バッハ会長が、マラソン移転を主導した最終決定権とは異なり、安倍総理から提案をさせた理由は、批判を受けたマラソン移転と同様の手法を避けたためと思っていましたが、どうやら違う思惑があったようです。

 それは膨大な追加経費の問題です。日本側から五輪延期の要望を出させて、IOCがそれを承認するとなれば、伴う経費負担は提案側にあると印象付けるためだったのです。

 一方、組織委員会の遠藤会長代行が、来春の要望も出ていることに、「どっちにしても課題はいっぱいある。早く決める」と語ったとされ、春開催を言下に否定しませんでした。おそらく、延期に伴う膨大な経費負担の軽減や、各種スポンサーの離脱を阻止したいとの思いがあったのでしょう。

 来年の夏期では、世界陸上と世界水泳の両大会にぶつかるとの懸念に対して、両IF(国際競技団体)が、自ら延期すると表明した以上、7月・8月に決まっているのに、観察気球を上げただけかもしれません。

 今日のテレビに生出演した森会長が、6月~9月の間で検討していると漏らしましたが、今度は信ぴょう性を感じます。なお、9月は、パラリンピック期間を指していると思います

 今回のパンデミックは、来年の夏期でも完全な世界的終息は予測できないと公言する疫学専門家が少なくありません。春期は夏期に比べて相当に危険性があることは自明の理です。

 本当に3月の開催を検討しているのでしょうか。せっかく、危険な年内を回避して来年に延期できたのに、春期開催をチラつかせるのはやめるべきです。もし、春期開催を決めて、その準備を進めている間に、IOCから安全な開催ができないと判断されたら明らかに中止でしょう二度目の延期は考えられません。

 私はかねてより、6月の梅雨時に開催する案も検討すべきと主張してきました。その条件として、野球・ソフトボールをドーム球場に変更します。(なお、復興五輪の象徴として整備した「福島県営あづま球場」の利用については、その趣旨を活かした行事等を検討すべきです。)

 また、 経費増加は避けられませんが、アーバンスポーツ競技などには仮設屋根を増設します。一方で熱中症対策費は軽減できます。 さらに、馬術など雨天で厳しい競技は、開会期間の前半に始めたり、サッカーのように開会式前から試合を組むなど、雨天延期を含んだ日程を組むことも可能です。3月から8月中の選択であれば、6月がベターであると改めて主張します。

 最後に一言、春は花粉症のシーズンであり競技選手にも大勢いますが、花粉症の治療薬はドーピング違反の危険があります。違反を恐れて我慢し、パフォーマンスが低下するとして嫌う選手も少なくないことを付け加えておきます。