「アイスアリーナ」への改築に反対!

 東京都の「オリンピック・パラリンピック準備局」は、2月1日に、「TOKYOスポーツレガシービジョン」を公表しました。そのなかで、「本ビジョンは、東京 2020 大会の成果を今後どうスポーツの振興に活かし、都市の中で根付かせていくか、その姿を示すためとりまとめたものであり、大会で得た成果をスポーツフィールド東京の実現につなげていく。」と記しています。

 しかし、このビジョンで最も問題なのは、現在の「東京辰巳国際水泳場」を「辰巳アイスアリーナ」に改装するという計画です。これは絶対にやめるべきです。

 五輪の水泳競技会場として新設した「東京アクアティックセンター」とダブるためという理由は最初から分かっていたことです。だからといって「アイスリンク」に改修する計画は絶対に認めるべきではありません。

 過去には、長野や札幌の冬季五輪の影響で、都市部でも「アイスリンク」の需要が一時的に高まりました。そのため、1964年の東京五輪施設である「国立代々木第一体育館」は、五輪終了後に、夏は「プール」、冬は「アイススケート場」としての設備機能を持たせ、またプールの上に床を張って体育館としての使用も可能にしたのです。昭和39年に、アイススケート場が一般公開されると、確かに数年は珍しさもあり相当の入場者がありました。

 しかし、この活用方法は、建設当初の基本計画から公表されていたため、代々木競技場が完成してから13年の歳月を経て、多目的競技施設として活用したのですが、膨大の維持経費が掛かり、現在は「体育館」に限定し、スポーツ競技と様々な劇場として多目的に利用されています。しかし、このように多様化しても経営が一時的にも出来たのは、国立施設であり、代々木駅前という恵まれた立地条件があったからです。

 都内にも一時期、「アイスアリーナ」と「室内プール」に季節分けしていた施設がありましたが、完全に失敗しました。この利用方法は、切り替え期間2ケ月間のロスや製氷コストなど、当然ながら厳しい不採算になります。

 現在は、都内に10数か所の「屋内スケートリンク」が存在するものの、ほとんどが「冬季限定」であり、現在でも夏期を含む通年で開場しているのは、「明治神宮外苑(新宿区)」が管理する「アイススケート場」と、西東京市の「ダイドードリンコアイスアリーナ」だけです。

 まして、利便性の悪い臨海部地区に通年の「アイスアリーナ」を開設するなどは論外であり、どうしても、「アイスアリーナ」として残したいのであれば、都立施設ではなく、江東区に所管替えして、区が運営すべきなのです。

 実は、これまでも同様の問題がありました。例えば、1976年に建設された都立の「夢の島総合体育館(江東区夢の島)」も、不便な場所にありましたが、近くに都が1993年に「辰巳国際水泳場」を開設したことを受け、「夢の島総合体育館」を廃止しようとしたのですが、地元から反対を受け、同施設の運用主旨を変えて継続させました。これも完全に江東区利権なのです。

 これらの歴史は、江東区だけではありません。例えば、昭島市にあった、現在は廃止されている「都立多摩スポーツ会館」も、都立施設と言いながら、ほぼ地元住民が利用する施設だったのですが、昭島市は、管理運営費の負担を避けるため、東京都からの施設移管を受けなかったのです。しかし、10年たった2004年になって、やっと昭島市は「昭島市総合スポーツセンター」として受け入れています。

 同様に、都立の「東京辰巳国際水泳場」を「アイスアリーナ」に改修して利用し続けるというなら、現状施設を江東区に移管(あるいは無償で譲渡)して、江東区が「アイスアリーナ」に改築して管理・運営しなければなりません。もしそれを江東区が受け入れないのであれば、東京都は「東京辰巳国際水泳場」を廃館にすべきです。