前回にIOCの制裁方針とその対応を書きましたが、その後にも注目すべき経緯がありました。
IOCバッハ会長が、「国ぐるみ」ではなく「組織ぐるみ」としたことで、プーチン大統領が手のひらを反すように、「ロシアにも一部悪いところがあった」と認め「五輪はボイコットせず、個人参加の選手を止めない」と発言しました。安堵したプーチン氏としては当然でしょう。
さらにロシア側は、アメリカに亡命してロシアを告発したドーピング検査所のロトチェンコフ元所長が、「検体すり替えの方法を作り上げ、選手にドーピングを促すなど不正を主導した」犯罪者だったとして、IOCに謝罪したのです。
IOCもそれに合わせるように「ロシアが国家としてドーピングを支援した証拠を見つけられなかった」と発表しました。まさに出来レースです。
加えて、WADA(世界アンチ・ドーピング機構)がロシアの国ぐるみ偽装工作を主導したと認定し、IOCがオリンピックから永久追放した元スポーツ大臣のムトコ氏は、堂々とロシア副首相に昇格したうえで、来年開催される「サッカーWカップロシア大会」の組織委員会会長を務めています。また、FIFA(国際サッカー連盟)がそれを了解しているのです。
この問題の経緯を俯瞰的に見ると、日本の「森友問題」に似ていませんか。籠池夫婦が逮捕され、佐川前理財局長が、徹底的に事実を糊塗した功績で政府を守り、見事に出世した構造と酷似していると感じるのは私だけでしょうか。
それだけではありません。2014年ソチ五輪のドーピング再検査で違反が判明し、失格となったロシア選手25名(22名+3名)全員が、CAS(スポーツ仲裁裁判所)に異議申し立てをしました。選手たちは、犯罪者のロトチェンコフ氏に騙されたのだとして、資格停止期間の軽減を狙っているだけです。白々しいとしか言えません。
さらにIOCは、ロシアが今回の決定を全て順守し、調査機関の設立や調査にかかった費用1500万ドル(約17億円)を支払えば、平昌五輪の閉会式で国旗を掲揚することを許可するとして制裁を解除することも発表したのです。ここまで出来レースだったとすれば、IOCが今後も対応したければならないドーピング対策を世界が信用しなくなるでしょう。
2020年東京オリンピック・パラリンピックでは罰則規定のない「反ドーピング法(仮称)」が、次回の国会に上程されますが、このような状況では、日本のドーピングチェック機能が奏功するとも思えません。ソチ大会や北京大会のように、後世に禍根が残る大会になる懸念があります。
何がオリンピックの持続可能性(サステナビリティ)だと言いたい。