朝日新聞の3月15日朝刊に掲載された「東北学院大学名誉教授 岩本由輝先生」のインタビュー記事を読んで、「復興五輪の名目に震災使う無責任さ」の小見出しを重く受け止めました。
 岩本氏は、さらに「被災地の人間としては、ひとの不幸をキャッチフレーズにしないでほしい。」と続けています。痛烈な指摘であり、東京都、大会組織委員会にはどのように聞こえるだろうか。

 先般、震災7年目に合わせて、時事通信社が自治体の長を対象に調査していますが、総じて期待外れという認識が表れています。
 また、河北新報社は、東北三県の被災者、非被災者の人々を対象にアンケート調査をしており、その結果でも、復興五輪の理念が明確ではないとか、復興には役に立たないという回答が多かったと報道されています。

 昨年の震災の6年目に行われた朝日新聞のアンケートでは、被災地の首長の約6割が、復旧・復興にマイナスになると回答していました。

 私は、昨年の3月15日に、現在の「復興五輪」に関連した事業や取り組みには、違和感があるとして「本当の『復興五輪』とは何か!」を書いていますのでご覧ください。

 これまで、「復興五輪」をオリンピック開催の意義として強調してきた東京都や大会組織委員会は、どのように受け止めているだろうか。
 
 昨年同様に主張しますが、聖火リレーを重点的に回したり、野球・ソフトの1試合だけを現地で開催することは、自治体やスポーツ関係者以外からあまり評価されていません。(なお、宮城県のサッカー会場は、すでに招致段階で決まっていました。)

 また、小池知事が復興五輪の証しだとしてボート会場を宮城県長沼に移すと話題にした時も、「復興基金の寄付金」で整備し、五輪後の維持費を市に押し付けて、「復興五輪」を振りかざす知事に騙されるなと、私は発信していました。(そのために、ずいぶん批判を受けましたが・・・)

 さらに、当初は、東北地方に海外チームの事前キャンプを誘致すると強調していましたがほとんど奏功せず、内閣府が発案した「復興『ありがとう』ホストタウン構想」も、被災地自治体の反応は鈍く苦戦しています。

 昨年暮れに組織委員会は、五輪とパラリンピックの開・閉会式の全体コンセプトを決めましたが、そのテーマは、平和、共生、復興、未来と定めて、その復興について次のように説明しています。
【復興】自然災害を乗り越え、諦めることなく次代を創ろうとする姿を示し、世界の人々への勇気へとつなげる。 〇人間も自然の一部であるという考えに立ち、自然に対する畏敬の念を大切にする。 〇繰り返し訪れる自然災害から復興していく過程において、よりよい社会を創ろうとする人間の強さを示し、世界中の被災者の方々へ勇気を伝播する。
 なんと、大震災に立ち向かい、見事に復興し続ける東日本の姿をアピールして、世界に向かって、災害に諦めることなく、被災に立ち向かう勇気を伝播するというのでしょうか。大丈夫だと思いますか。

 もう一度主張しますが、国を挙げてやらなくてはならないのは、選手村の食事をすべて被災地の食材で賄うことではないですか。
 そのためには、農産物の国際基準・グローバルGAP認証取得を最速で進めることと、いまだに輸入禁止を続けている国・地域に対して解除に向けて取り組むことでしょう。
 しかし、現在は精力的に取り組んでいますが、あまり進んでいるとは思えません。

 先日も、福島県沿岸で取れた魚が福島第一原発の事故後に初めて輸出され、輸出先のタイ・バンコクのレストランで提供されると報道されましたが、そのPRイベントが現地の消費者団体の反対で中止になったと聞きます。相手のあることで難しい問題です。

 「復興五輪」が本当に評価されるとすれば、選手村の食堂ですべての海外参加選手が、東北の食材で調理された日本食を絶賛して食したときだけだと主張しています。何度でも言い続けていきたい。

 最後に、岩本氏が、復興に際して「『絆』という言葉には、なにか上から目線を感じてしまう。」と発言されていることも重く受け止めたいと思い、紹介しておきます。