相変わらず、新型コロナウイルスの感染拡大は続いています。

 前回は、夏までに終息するとの専門家の推測が外れて、最悪な事態が推移した場合は、世界の参加選手にリスク軽減をアピールするため、IOCが強権発動的に無観客試合を提言することもありうると想定して書きました。

 今回は、専門家の推測通りに大会直前の7月には概ね終息したとしても、風評被害等の後遺症状が続く懸念を想定したいと思います。

 まずは、中国からの選手と訪日観戦者に対する、排斥ムードが容易に収まるとは思えないことです。

 さらに、ネット等で再発懸念が流布されたり、レスリングや柔道などのコンタクトスポーツ選手が、拒否反応を示すぐらいは十分想定されますので、今から対策を検討すべきでしょう。

 また、韓国の反日グループが、防護服姿で聖火リレーをするポスターをバラまいて放射能五輪だと揶揄したように、今度は、感染拡大五輪と称して風評を立てることを危惧しています。

 また、中国と経済対立が続くアメリカが、きつい派遣条件を押し付けてくるなど、便乗的な要求が出てくることも十分想定されます。

 さらに、ドーピング問題で国の参加を外されたロシアも黙っていないでしょう。

 昨年、日本で開催された世界柔道選手権において、イラン政府が、イラン選手とイスラエル選手の対戦を避けるために、自国選手に棄権するように指示したことで、IOCやIFが厳重な処罰を下しました。

 このように、政治的批判や主張には、IOCは五輪憲章に則り処罰できますが、感染症への懸念でボイコットする自主判断に対しては、IOCといえども処分できないでしょう。

 したがって、IOCと日本は、感染症による風評被害や誹謗中傷には毅然と対応し、世界の参加国が思惑を絡めて悪質な主張や便乗的な差別をしないよう事前忠告するとともに、WHOの協力を得て、正確かつ十分な情報開示に務めなければなりません。

 感染症に関しては、前回のリオ五輪でも蚊が媒介するジカ熱が懸念されました。その際には、日本のプロゴルフの松山選手が出場を辞退し、各国の有力選手からも相次いで辞退者がでました。

 実は、プロ選手が五輪参加の辞退を申し出ることは、容易に想定できます。億単位の収入を競うゴルフ、テニス、野球などのプロにとって、栄誉を求める五輪大会への参加は二の次だからです。

 さすがに今回は、日本のプロ選手にとって地元開催ですから、栄誉を求めて出てくるでしょう。しかし、外国のプロ選手は、栄誉のために健康的危険を冒してまで来日する意欲は、個人差はあれども低いといえます。

 その例として、東京五輪で復活した野球競技へのアメリカの参加について、すでにメジャーリーグ機構は、以前から公式試合を中断しないと公表しています。したがって、マイナー選手中心のチーム構成で参加する予定です。

 遡れば、1964年の東京五輪時のIOC会長は、Mr・アマチュアと言われたブランデージ会長でしたが、1984年のロサンゼルス五輪からは、放送権料主体の商業化路線を成功させたサマランチ会長でした。その路線の一環として、五輪への注目度を上げるためプロ選手の参加を解禁したのです。

 次に、「ホストタウン構想」に与える影響も考えなくてはなりません。

 ホストタウンとなった地方都市は、ほとんどが事前キャンプ地を兼ねていますが、その対象国の選手が来日したとしても、事前キャンプを日程通りに実施するのでしょうか。

 いうまでもなく、事前キャンプは、日本の気象条件や時差に慣れて最大のパフォーマンスを発揮するために、選手にとって重要な最終調整の機会です。

 しかし、日本国内において、最終的な終息宣言、安全宣言が出て信頼されていなければ、海外の選手は、少しでもリスクを避けようとして、自国での調整を重視し、ぎりぎりで来日する国が多くなることは想像に難くありません。あるいは、事前キャンプはキャンセルとなり、一部役員だけがホストタウンに表敬訪問するという寂しい交流になることも十分想定されます。