先日、北海道新聞が、2030年の札幌五輪招致について、札幌市民に世論調査をしたところ、67%が「反対」だったと報道しました。
 その結果を受けて、JOCは五輪招致について「まずは国民の不安や不信感を払拭する必要がある。これまで以上にていねいな説明、発信を心がけていきたい。」と、招致に向けて前向きな姿勢をみせたと報じられています。
 しかし、すでに札幌市とJOCは12月に、「積極的な機運醸成活動を当面休止する。」と発表しています。その理由は、「東京五輪」に関する贈収賄や談合事件が捜査中の真っただ中において、札幌五輪反対の機運が高まることを恐れたことは言うまでもありません。
 報道されているように、2030年冬季五輪開催地の正式決定は、IOCが気候変動などへの対応を理由にして、2024年以降に先送りされていますが、これはバッハ会長を中心としたIOC幹部が抱く、五輪開催の招致反対機運に対する危機感を表しています。
今や巨大な商業イベントと化した近代五輪の開催に対する地元住民の反対運動は、民主国家であれば、大きなうねりとなることは必定です。
 すでに、札幌市は、「北海道・札幌オリンピック・パラリンピック冬季競技大会概要」やその「更新版」を公表していますが、その中には、経済波及効果などバラ色の未来をアピールしています。しかし、過去に目標を達成した五輪開催都市は少なく、負の遺産を残した都市がほとんどです。その最大の要因は、五輪開催権限を持つIOC、IPC、IFの競技会場への注文や修正です。
 例えば、招致段階での「コンパクト」や「シンプル」などのアピールは、競技場設定の権限を持つIFの承認が必要です。「2020東京大会」の新規競技場においても、コンパクト五輪を表明し競技会場のコンパクト化を目指しましたが、競技のアピールを目指すIFの承認が出ません。例えば、東京五輪で新設された「東京アクアティクスセンター」の観客席数もIFの指示で、大幅に増加させられたのです。
 また、施設の後利用における最悪のケースは、長野五輪大会で新設した「スパイラル(ボブスレー・リュージュパーク会場)」です。この「スパイラル」は、五輪後の利用は皆無に近いと分かっていたのに20年間も稼働させ、年間維持費を2億円以上支払い続けた、五輪史上、最悪の負の遺産です。
 札幌市を含む北海道は、いうまでもなく日本最大の冬季競技地域です。長野と同じではないにしても、大会仕様で増設した観覧席などは、できるだけ元に戻すべきです。