新国立競技場に聖火台の設置場所がないと、マスコミが驚いて一斉に報道したことで、世間は「またか」と呆れるような反応が広まりました。

その時の私の第一反応は、現段階でなぜ大騒ぎするのだろうという驚きでした。

すでに、白紙撤回されたザハ案の時から、あのドーム式スタジアムでは、聖火台がスタンドに設置できないことはわかっていたはずなのに、今さら何を騒いでいるのだろうということです。

第二の驚きは、その説明を求められた、森会長、遠藤大臣、馳大臣、舛添知事のうろたえたような発言や、JSCと組織委員会のやり取りを聞いたことです。唖然としました。

各トップや組織の「議論していなかった」「忘れたやつが悪い」「言ってある」「聞いていない」などが報道で流れたとき、この人たちは、こんなレベルの情報さえ共有していなかったのかという驚きです。

聖火について、現在のオリンピック憲章には、「OCOG(オリンピック組織委員会)が開会式場に運び入れなければならない」と決められているだけであり、聖火台のことは何も示されていません。

また、憲章の具体的な指示に当たる「IOCプロトコル・ガイド」によれば、「最終聖火ランナーによるオリンピック聖火の点灯」と書いてあるだけ、聖火台の条件は示されていません。

確かに、2003年のオリンピック憲章には、聖火について「はっきりと見える目立つ場所で、スタジアムの構造が可能ならばスタジアムの外からも見える場所におかなければならない。」と規定されていますが、スタジアムの構造が可能であればという条件を付けています。

なお、翌年の2004年の憲章改定では、この文章は消えて、「オリンピック聖火をオリンピック・スタジアムに運び入れる責任はOCOGが負う。」と変わり、現在に至っています。

ですから、聖火の扱いはともかく、聖火台の要件については、一切規定されていません。開催都市の裁量で検討すれば良いことになっています。今の段階で慌てる必要はまったくないのです。

現段階では、各トップや組織は、都民や国民に対して、「ご心配なく、開会式の演出はこれからですから、これから検討していく予定となっています。」と納めればよかっただけのことです。

それを、このような狼狽が繰り広げられるようでは、今後の進捗が本当に心配になってきました。