ひとつ、記述を訂正しなければなりません。

 前回(第四弾)の、「室伏選手が、現役復帰する理由」のなかで、「室伏広治氏は、竹田会長のIOC委員辞任を見越して、リオ五輪前のIOC総会で投票されるIOC選手委員の補充選挙に再立候補するために、現役続行を表明したのだと、私は推察しています。」と書きましたが、推察が間違えていました。

 室伏選手は、すでに、昨年の12月に、リオ五輪で行われるIOC選手委員の選挙候補者24人(当選者は4名)に入っていました。大変失礼しました。ただ、一度失格を受けていますので、投票結果は厳しいのではないかと推測します。

◎ 今の日本に、スポーツ国際人がいない
 いずれにしても、現在、日本のIOC委員が、竹田会長1名(北朝鮮も1名です)であることに変わりはありません。

 特に最近は、五輪種目のIF(国際競技団体)会長に日本人がいないことを憂慮してきました。(IF委員枠は15名)

 日本発祥の「柔道」でさえ、現在の国際柔道連盟会長は、オーストリア人のマリウス・ビゼール氏(IOC委員)で、日本人は30年余り就任していません。なお、名誉会長はロシアのプーチン大統領です。

 世界からリスペクトされるスポーツ国際人が、ずっと日本に出現してこなかったことが、今回の招致疑惑を引き起こしたことと無縁ではない、というのは言いすぎでしょうか。

 これまで、日本のスポーツ外交力の脆弱さが、関係者において憂慮されていたため、「スポーツ基本計画」に、以下のような政策が書き込まれたことをご存知ですか。

【参考】
文部科学省「スポーツ基本計画」(平成24年3月)
(2)スポーツに係る国際的な交流及び貢献の推進
① 施策目標:
 国際スポーツ界において活躍できる人材を養成し、情報を収集・発信する体制を整備するとともに、国際的な人的ネットワークを構築し、我が国の貢献度や存在感を高める。
② 現状と課題:
 我が国のスポーツ界は、中央競技団体ごとに国際競技連盟等とつながりがあるものの、日常からの情報の収集・発信や、国際的なスポーツ界への参画が不十分であり、国際競技連盟の動きを察知できないまま、競技ルールの改変等で不利となる事例も見られる。
③ 今後の具体的施策展開:
 JOC、JPC及び中央競技団体においては、国際機関や国際競技連盟等に対する、(中略)国際スポーツ界におけるイニシアティブを確立し、(中略)国際的なスポーツ・コミュニティと安定した関係を築くことができる人的ネットワークの構築に努めることが期待される。

スポーツ基本計画(41頁)

 日本には、金メダルの数しか興味がなく、メダル数が国力を表す手段としか思っていない、政治家やスポーツ界トップが、あまりに多すぎます。

 そのため、スポーツ少年を選抜し集中管理して、国民にメダル数の公約を達成することしか考えていない人々は、「国際スポーツ界において活躍できる人材を養成」をメダル獲得人材の養成と思い込んでいるのでしょう。いや、この基本計画の存在さえ知らないか、覚えていないのでしょうね。

 国際スポーツ界へ存在感がない日本(人)は、国際コンサルやロビー活動は最も苦手であり、広告代理店任せにしてきたツケが回ってきたのではないでしょうか。

 ここに及んでJOCがやることは、説明責任を果たすことはもとより、IOCの処分を待つのではなく、自浄作用を働かせ、関係者の厳しい処分など、ガバナンスを国内外に示すことが、この危機を乗り越える最大の対策だと思います。

 今回の疑惑解明の処理を間違えると、五輪反対と五輪返上の意見が、特に、国内で膨張することを心配しています。

 日本は、2026年の冬季五輪に、札幌市が立候補すると意気込んでいますが、2018年平昌(韓国)、2022年北京(中国)の後に、地政学的だけでなく、今の日本に対する世界評価のままで札幌が選ばれると思いますか。

 JOCは、札幌五輪招致を承認する前に、改革しなければならないことが山積しているのではないですか。今の段階で、札幌にまで言及する必要ないと思いつつも・・・

◎ 都知事だけでなく、議員外交の無駄
 現在、舛添都知事の海外出張が批判を浴びていますが、2016年、2020年の五輪招致活動において、都議会議員と国会議員が、議員外交と称して、何人海外出張したかご存知ですか。
 
 その経費が、招致経費なのか公費なのかは調べればわかりますが、総額を聞けば、都知事だけではないと批判が広がるかもしれません。

 なお、2018年招致報告書に、あらゆるネットワークを活用した招致活動のルートとして、「スポーツ界ルート」「政府外交ルート」「国会議員連盟ルート」「経済界ルート」と記録に残していますが、議員外交が招致の成果を上げたということは皆無に等しいでしょう。