東京五輪に5種目18競技の追加が内定しました。とりあえず、関係者の皆様、おめでとうございます。

 さて、5種目が内定したとして、喜んでばかりいられません。

◎ ロゲ会長からバッハ会長へ
 実は、前任のジャック・ロゲ会長(2001年~2013年)は、「肥大化した五輪のスリム化」を掲げ、コンパクト五輪やクラスター施設提案を求めるとともに、ロンドン五輪から野球とソフトボールを廃止し、レスリングまで廃止の検討がされました。

 ところが、現在のトーマス・バッハ会長は、それより五輪開催都市の相次ぐ辞退に危機感を覚え、プログラムの構成を、種目数から競技数に変更しました、すなわち、種目数が増えても、競技数を減らせば、参加総人数を抑制できると考えたわけです。

 IOCが「アジェンダ2020」を作ったのは、バッハ会長の考えに基づき、近年の五輪招致を希望する都市の立候補辞退を防ぐための対策が最も大きな理由です。

 東京五輪では、熱望している野球を、1回の限定で認めたとしても、それによって、今後の立候補を検討する都市が、自国に有利なスポーツを開催できるというインセンティブを市民にアピールでき、支持率を上げられるというメリットを、バッハ会長は試してみたかったのでしょう。

 東京の提案を聞いた一部のIOC委員が、野球への米国メジャー選手の不参加報道(廃止理由の一つ)や、最初から最大規模まで認めていいのかという異論を理事会前に主張していましたが、IOCは、アジェンダ2020を作った以上、基準に則って提案された内容であれば異論はなく、想定内として認めたということです。

 さらに、国家並みの予算を持つ東京都を見越して、開催都市が財源を持つ条件で種目を追加するのなら、若者種目をさらに拡大してみて、五輪への人気が高まるのかを見極めるためにも良い実験になります。

 東京都の組織委員会が、今回は一括採決を熱望した成果として自慢していますが、結果的に、野球・ソフトボールの復活が最大の目的だった組織委と、IOCバッハ会長の思惑とが、同床異夢で合意したといえます。

◎ 新会場の経費負担は東京都
 さて次は、組織委が、会場設定にともなう経費負担増をどう処理するのか、見とどけなければなりません。

 昨年12月、会場整備や大会運営費が、立候補段階では約3千億円であった見込みが、その6倍の1.8兆円にまで膨らむとの報道が出て、都民と国民を驚かせ、見積もりが甘いと批判が高まりました。
 
 その時、組織委は、まだ精査していないと積算を先送りしたのは、この5種目の内定以前に出すより、野球復活で国民を喜ばせておいてから、大会経費の総額見込みを発表したほうが、批判が少ないと考えたのでしょう。

 タイミングとしては、リオ五輪で日本国中が盛り上がっているときに、実は東京都も2兆円、3兆円かかりますと発表するのではないかと推測しています。

 なお、東京都は舛添知事の公金疑惑で五輪準備も不全状態です。おそらく、組織委は、5種目の増加経費分を、すべて都に押し付けることになるのでしょう。

 今後の推移を見守りましょう。