リオデジャネイロ五輪の開催中に行われたIOC選手委員の補欠選挙で、日本の室伏広治氏が落選しました。一方、ロシアの組織的なドーピングで五輪参加を禁じられたエレーナ・イシンバエワ選手が陸上競技部門で当選しました。
 この結果は、どのような意味を持つのでしょうか。日本のスポーツ外交戦略は、これまでも脆弱だと批判されてきましたが、東京オリンピックの準備にどのような影響があるのか、真剣に検討すべきと考えます。

◎ 今回の選挙の条件は、
*リオ五輪に参加している約1万1千人の選手に投票権があり、5185人が投票した。
*改選枠は4人で、当選は1競技に1人だけである。今回は、陸上競技から5人が立候補した。
*8年の任期を得た選手委員は、IOC委員としてIOCの政策決定に関与できる。

◎ 今回の選挙の結果は、
*室伏氏は、今回で3度目(北京、ロンドン、リオ)の立候補となったが、実らなかった。
*室伏氏は1070票で、立候補者23人のうち10番目の得票だったが、イシンバエワ選手は1365票で4番目だった。JOCは、ロシアのドーピング問題で室伏氏が有利とみていたふしがある。
*室伏氏は、ドーピング対策の推進や選手のセカンドキャリア支援などの政策を訴えたが支持を広げられなかった。本人は、「精いっぱいやった。これ以上はできないと思う」と報道に述べた。
*当選した他の3人の国籍は、ドイツ、ハンガリー、韓国である。ちなみに、韓国人のIOC委員は、今回の選手委員を含めて3名となった。(日本人は、竹田氏1名だけ)

◎ これまでの選挙では、
*1996年のアトランタ大会から選手投票方法が導入され、日本からは、小谷実可子氏(シンクロ)、松岡修造氏(テニス)、荻原健司氏(スキー)と立候補したが落選が続いてきた。その上で、室伏氏の3度落選は深刻で、JOCは極めて大きな落胆となった。

 JOCの外交戦略に問題はなかったのだろうか。室伏氏はロンドン五輪で投票は第1位だったにもかかわらず、選挙活動で規定違反があったとして除外されました。これが今回に影響すると考えなかったのでしょうか。室伏氏を3度も立候補させるのに躊躇しなかったのでしょうか。

 JOC竹田会長も、東京都の招致活動でのコンサル料振り込みが疑われていることが影響して、計画していたIOCの副会長か理事選挙への立候補を諦めたことを考えれば、今回の室伏氏落選も、招致活動での不正疑惑が影響していないのでしょうか。

 過去にも指摘したことがありますが、国際競技団体(IF)の役員に日本人は少なく、会長に至っては現在皆無です。そのため、スポーツ外交力が弱く、日本のスポーツ界は不利を受けてきました。

 特に、競技規則の改正に際しては、日本選手に不利なルール変更が行われ泣かされてきた事例は、枚挙にいとまがありません。

 また、2020年東京オリンピックに影響する可能性もあります。IOCから追加の要望が加えられることにも注意しなければなりません。

 リオデジャネイロ五輪での日本選手のメダル獲得は、選手の努力の賜物であることは言うまでもありません。しかし、IFの審判基準に日本選手が不利を被ったことは無かったでしょうか。

 専門外で真偽のほどはわかりませんが、女子レスリングの吉田選手が負けた陰には、審判が組むことを急かす方針になったことで、タックルのタイミングが少なかったと解説をする専門家がいましたが、これも遠く影響しているのではと疑うのは、言いすぎでしょうか。

 なにしろ、日本のスポーツ外交戦略が、世界にまったく通用していないままでは、五輪準備や選手活躍の足を引っ張ることになりませんか。もう一度、JOCは抜本的に考え直さないといけません。