あくまでも、一般論としてご説明します。

 「総合評価落札方式」は、落札者を恣意的に誘導することが容易になります。

 当該方式を概説すると、次の通りです。

 小泉内閣は、規制緩和・民間開放政策の一環として、公共工事の発注者(国や地方自治体等)に対し、技術提案を重視した入札方法を推奨してきました。

 その結果、PFI法改正や指定管理者制度導入とともに、総合評価方式が普及してきたのです。

 いわゆる、従来の価格競争入札の「仕様発注」から、品質確保等の技術評価を点数化する「性能発注」に移行してきました。

 なかでも、大規模工事や難工事には、総合評価方式が主流となり、安全・確実・高品質の公共工事が保障されるようになってきたのです。

 なお、技術評価は公平・平等・正確に審査される必要があるため、技術審査委員会と学術経験者によって採点とそのチェックが行われます。
 しかし、その審査結果について、総評と評価点だけは公表されますが、審査議事録は公表されません。

 そのため、なぜこの評価点になったのか、疑問が持たれ疑惑と指摘されるケースも少なくありません。

 例えば、こんなケースもあります。

 各審査委員は、膨大な応募資料をすべて読み込んで、自主的に評価点をつけることは物量的に困難です。
 大抵は、事務局が、応募資料を要約して採点しやすく加工する場合が多く、案件によっては、評価の事務局案を委員会に示しておいて、最終判断が覆ることのない範囲内で、委員から意見をもらうなどのやり方も囁かれてきました。

 そこに、事務局が恣意的に結論を導くことは、僅差の提案であるほど容易にできます。

 なお、いずれにしても違法性はありません。あったとしても不適切の範囲です。

 ところで、新国立競技場のA案とB案の評価点も皆さん十分納得しましたか? あれも「総合評価落札方式」の一種です。得点差に腑に落ちないところが残っているのは、私だけでしょうか。

 今年1月に、東京都の「設計・施行一括発注の技術提案型総合評価方式」で公募された、「海の森水上競技場」「有明アリーナ」「オリンピックアクアティックセンター」の整備・新築工事3件は、すでに、落札者が決定し、今年度の第一定例都議会で議決されており、契約に至っています。

 小池知事が、オリンピック経費の再チェックをすると報道されていますが、おそらく、当該3施設の入札予定価格に関する総額の積算根拠と妥当性が再検証されるかもしれません。
 検証の結果によっては、契約変更にまで踏み込むのでしょうか。見届けたいと思います。

 それにしても、江東区だけに、素晴らしい恒久施設が建設されますね。
 まさか、五輪後の維持管理費はすべて都税で賄うのではないでしょうね。
 多摩地域の住民としては極めて不満です。