水泳競技場となる予定の「オリンピックアクアティックセンター」の建設を中止して、「東京辰巳国際水泳場」を改修・増席して使うという案を、東京都の調査チーム「都政改革本部」から提案され、経費削減の目玉といわれています。
 
 まず、結論から言いますと、辰巳水泳場を増設するのは、想像以上の改修費、後利用の困難さ、軟弱地盤のため防災機能の低下など、新たな課題を抱えることになります。

 もともと、増設を想定していない屋内施設を拡張することは難しい上に、軟弱な運河側を開いて躯体構造を変えるとすれば、難工事と改修費拡大を覚悟しなければなりません。

 さらに、東日本大震災の影響を受けた辰巳水泳場は、液状化した地盤の上にあったため、水深調整床が破損し地下機械室の損傷も激しく、巨費を投じて復元したばかりです。

 また、提言通りに駆体の大改造をして1万席以上に増席しても、後利用ができません。いまの5千席の水泳場でも、長年にわたって「日本水泳選手権」を開催してきました。
 巨費をかけて改修しても、後利用のためには減設しなければならず、さらに駆体の構造を傷めることになり、無駄な投資になります。

 実は、東京周辺には、辰巳水泳場以外に、習志野市駅前の「千葉県国際総合水泳場(常設3,660席)」、神奈川県の「横浜国際プール(約5,000席)」を含めて、国際公認プールが3施設あり、オリンピックや世界選手権以外は、いずれも十分対応可能です。
 ただし、競泳プールの水深が2mから3mにルール改正されるなど、移行期間を踏まえても、いずれは改修が必要になりますが・・・

 したがって、私の第一案は、前回の東京五輪で水泳会場のために建設した「代々木第一体育館(約1万席)」を復元することです。
 現在は床式のアリーナになっていますが、実は、地下にプール構造が残っているからです。
 もちろん、年数が経っていますので、プール基準や老朽化等の調査は必要ですが、多少の改修費をかけても、格安で水泳場が復元します。

 もし、旧五輪と同じ会場で水泳競技を行えば、持続可能性(サステナビリティ)のメッセージにもなり、IOCは称賛すると思います。
 
 また、どうしてもプールの復元が困難であれば、その施設構造を活かして、「仮設プール」を設置することも可能です。

 実は、2001年、福岡県のイベント会場に仮設プールを組み立てて、「世界水泳選手権」を開催した実績があります。さらに、この仮設は、当時の設備レートで、練習用と水球用を含めても4億5千万円しかかかっていませんので格安です。
 
 ただし、代々木体育館は、2020年の「ハンドボール会場」に決定していますので、玉突きで別な会場を確保しなければならないという課題は残ります。
 なお、辰巳水泳場改修案でも、水球競技が決まっていましたので、別途に水球会場を探さなければならないことは同じです。

 また、別案として、現在のアクアティックセンター建設予定地に、仮設プールを作ることも考えられますが、更地なので観覧席を含む体育館構造を作らなければならないために、格安までには至らないと思います。
 それでも、現在の683億円を考えれば、一桁の額が削減できると思われます。

 しかし、「有明アリーナ」も含め、この一帯に新設施設を作らせないという改革案の裏に、国が法案成立を目論んでいる、総合型リゾートのIR法(別名カジノ法)を、五輪後に、この一帯に適用するため、スポーツ施設は邪魔だという思惑が潜んでいるわけではないのでしょうね。まさか・・・