東京オリンピック限定の追加競技となった野球に、メジャーリーグ機構(MLB)は、メジャーリーガーの出場に反対すると発表したようです。

 「やはり!」という以外ありません。最初から懸念されていたことですが・・・

 昨年、組織委員会は、何とか東京五輪で野球を復活させたいとして、米国を説得したのですが、MLBは当初から協力に難色を示していました。でも、1回だけの復活には反対しませんでした。

 あのシーズン前のWBC(野球世界一決定戦)でさえ、母国のために出場した海外出身のメジャーリーガーは別にして、米国出身の選手は出場に極めて消極的でした。日本チームだって、青木選手以外の日本選手は、すべて辞退したではないですか。

 ましてや、リーグ戦真っただ中の7、8月に、メジャーリーガーがビジネスである所属チームから離れるわけがありません。そんなことは、当初からわかっていたはずです。
 それでも組織委員会は、日本人に人気の高い、メダルが確実に見込める野球を東京五輪にどうしても入れたかったのでしょう。
 そのため、苦肉の策として、たった6チームを2リーグに分けて、3チームのうち上位2チームが勝ち上がり、計4チームで、準決勝、決勝のトーナメントを組むという、小規模な競技方式を考えました。

 その思惑は、1チームの試合数を最大4試合に抑えて、メジャーリーガーへの参加を促そうとしたのですが、その作戦も奏功しなかったというわけです。もし、メジャーリーガーがほとんど参加せず、日本国内だけが盛り上がってメダルを取っても、世界各国からは冷ややかな目で見られるだけです。

 一方、危機感を感じている「世界野球・ソフトボール連盟(WBSC)」は、1次リーグを6チーム総当たり戦でやるべきと当初から主張して譲りません。それは、当たり前でしょう。日本提案の小規模なプログラムで強行すれば、2024年以降、不人気な競技として、二度と野球はオリンピック競技に復活しないからです。

 さらにもう一点、WBSCは、野球を復活させるのであれば、8チームの参加を最初から主張していました。
 
 その根拠は、2013年前までのオリンピック憲章に、出場チーム数は12チーム以下8チーム以上にしなければならないと決まっていたのです。野球・ソフトボールが最後となった北京大会でも8チームの競技プログラムでした。

 ところが、2013年9月に改正されたオリンピック憲章から、8チーム以上の定めの後に、「ただし、IOC理事会がこれと異なる決定をした場合は、その限りではない。」と書き加えられたのです。

 ちょうどバッハ氏がIOC会長に就任した時期と同じです。おそらく、現在のように、種目数を増やすことを見越して、1種目の規模を抑えたのではないでしょうか。そのうえ、アジェンダ2020において、追加種目は参加人数を500人以内に抑えることが条件になっていたことにもかかわらず、5競技18種目も提案したことで、人数の多い野球チームを増やすことは不可能でした。

 また、開催都市に与えた大会限定のインセンティブについて、IOCの関心は経費と参加人数を抑制させることだけです。したがって、6月のIOC調整委員会と組織委員会の会合の際に、コーツ調整委員長は、会場を一か所だけにしぼり最も試合数の少ないプログラム提案を支持したわけです。

 なお、女子のソフトボールの組み合わせは、6チームの総当たり戦が検討されているといいます。なぜなら、ソフトボールは1試合が7回戦なので、試合時間が短くて済むという言い訳です。もっとも、ソフトボールのプロリーグは、アメリカに小規模リーグがあるものの、野球の人気には遠く及びません。そのため、オリンピックが最高の舞台になるので出場辞退にはならないと推察しているのです。なんと、分かり易い判断ではありませんか。

 ちなみに、五輪でのサッカー競技は、各大陸予選を勝ち抜いた16チームが参加します。それを各4グループに分け、7会場(予定)で予選リーグを行い、各組上位2チームがトーナメントで戦います。

 それに比べて、野球はソフトボールと一緒に、会場は「横浜スタジアム」1か所だけです。なお、福島あずま球場は復興五輪をアピールするために、数億円をかけて、たった1試合づつを行うだけです。(どうせなら、予選リーグの会場をすべて福島にすべきと思うのですが・・・)いずれにしても、サッカーに比べて、なんと寂しいプログラムで盛り上がらないメダル争いでしょうか。