明日13日から16日までの4日間、IOC総会がペルーのリマで開催されます。
 話題は、既定路線となっている24年大会のパリ開催、28年大会のロサンゼルス開催を承認することに集まっていますが、それよりも、来年の平昌冬季五輪の開催に影を落としている北朝鮮問題に対して、IOCがどのようなメッセージを出すのかということに注目すべきだと思います。
 
 すでに、冬季五輪の花形である男子アイスホッケー競技は、プロホッケーの最高峰である北米アイスホッケーリーグ(NHL)が不参加を表明しています。前回のソチ大会までは、五輪開催時にレギュラーシーズンを中断し、選手らを参加させていました。しかし今回、平昌五輪への不参加を決定した理由は何でしょう。報道では経営面などについて様々言われていますが、本当は北朝鮮問題への懸念が一番ではないでしょうか。

 いうまでもなく、プロ選手のビジネスは収益とランキングアップです。夏季五輪においても、プロが中心のゴルフやテニスは、上位ランキング選手の欠場がすでに常態化しています。もともと、トッププロほど、五輪出場のメリットや魅力を感じていないことは明らかです。

 しかし、自国の国民から五輪メダルを期待されていることに、逆らうわけにはいきませんから、様々なやむをえない理由をつけて辞退を表明しているのです。

 リオ五輪では、ゴルフで日本人から最も期待されていた松山選手が、ジカ熱、日程、治安等を理由に辞退しました。結局、出場するメリットよりリスクのほうが大きかったからでしょう。

 日本の野球チームでも、メジャーリーグに渡ったプロ選手は、WBCも五輪もほとんど出場していません。(今年のWBCには、青木選手だけが出場)

 したがって、平昌五輪の出場に対しては、北朝鮮問題について今後の推移を見守りながら、トッププロ選手はもとより、北米の選手を中心に、様々な理由をつけて辞退していくのではないかと懸念しています。

 いうまでもなく、五輪は平和の祭典として、これまで国連を舞台に休戦決議などを続けてきました。にもかかわらず、他国侵略を理由にしたボイコット合戦や、大会中のテロ事件を繰り広げてきたことは歴史的事実です。

 今回のIOC総会では、五輪の平和理念をアピールするだけではなく、世界のアスリートに安心感をもたらして、プロ選手の出場辞退の言い訳にさせないようなメッセージはもとより、国際的な働きかけをしていけるかが問われることになりそうです。

 それと同時に、IOCは、歴史的に、アマチュア主体からプロ解禁を急速に広げてきた責任があります。今後、プロ選手に対して、五輪大会へ出場する価値を報酬以外に示していくべきであり、加えて、サッカー競技のように年齢を制限するなどの参加基準を見直すことを真剣に検討しなければ、これからの五輪大会の持続可能性(サステナビリティ)は維持できないのではないでしょうか。