IOC理事会は、WADA等の調査結果を踏まえて、ロシアの組織的なドーピング違反とその隠蔽工作を認定し、平昌冬季五輪にロシア選手団としての出場を認めないことを決めました。

 その一方で、過去に違反歴がなく、今後IOCのドーピング検査を受け続けることを条件に、個人資格での出場を認めるとしました。その際は、ロシア国の選手としてではなく、ロシア出身の五輪選手(難民選手団と同じ)として出場します。したがって、開会式では五輪旗で入場行進し、表彰台では五輪賛歌と五輪旗で受賞するという条件付きです。

 これまで、国ぐるみのドーピング違反を否定しつづけてきたロシアは、プーチン大統領がアメリカの放送機関の陰謀だと発言したり、ロシアでは平昌五輪の放送を一切しないと反発してきた経緯から、この後、どのような対応に出るか注目されます。

 一番懸念されるのは、ロシアがIOCの参加承認を受けたロシア出身の選手出場をすべて出国させず、一切の平昌五輪をボイコットすることです。

 その動向を一番注視しているのは、北朝鮮の金正恩でしょう。北朝鮮はIOCと韓国からの再三の五輪参加要請に一切反応せずに待っていたのは、ロシアの平昌五輪参加がどうなるかをも守っていたのだと思います。

 ロシアが国として五輪をボイコットすれば、北朝鮮も唯一決まっている「フィギュアスケート・ペア」の選手を送らないどころか、ヨーロッパ選手が懸念している五輪期間中に、何らかの軍事的挑発を仕掛けることに躊躇がなくなり、危険性が高まります。

 スポーツ関係者は、先の国連総会で五輪休戦が満場一致で決議され、北朝鮮も賛成したと喜んでいますが、これまで北朝鮮が関わったとされる「ソウル五輪前年の大韓航空機爆破事件」や「兄の金正男氏殺害事件」のように、一切国の関与を認めない間接的なテロ活動に走る危険がぬぐえません。

 これまでも、ドイツ、フランス、オーストリアから平昌五輪への参加に躊躇する動きがありましたが、今回のロシアの対応次第では、欧州各国を中心に選手派遣を懸念する動きが強まりそうです。

 加えて、これまでも平昌五輪の入場券の売れ行きが悪いことに危機感を感じ、韓国は必死に安全をアピールしていますが、選手どころか観光客の来韓が鈍ることも必定です。

 今後のロシアの反応を注視したいと思います。