平昌五輪の開会式に安倍首相は出席すべきだと思います。日程を理由に欠席することにも反対です。

 まず、五輪開会式に、世界の国家元首に招待状を出すことは、いつから始まったのか不明ですが、少なくとも、「オリンピック憲章」と昨年公開された「開催都市契約」には、その必要性も否定的意見も出てきません。ですから、慣例になっているだけです。
 また、厚遇が保障される「オリンピックファミリー」にも、国家元首は入っていません。
 それどころか、IOCは、オリンピック憲章において、五輪開催中は、あらゆる政治家の公的な発言やパフォーマンスを禁止しています。しかし、各国の政府首脳が開会式への出席を拒否する理由については批判をしていません。政治的判断は避けるという意味でしょう。

 その一方で、最近の五輪開会式への国家元首の出席状況は、五輪成功の評価の一つになり、参加人数や拒否理由などが、毎回話題になっています。

 例えば、2008年の北京五輪では、人権問題が指摘されながらも結果的に100人以上の各国要人が出席しました。日本も、聖火リレーの混乱を批判しながらも当時の福田首相が出席しています。
 また、2012年ロンドン五輪では、批判は少なく100人以上の国家元首等が参加しています。
 一方、2014年のソチ冬季五輪は、ロシアが同性愛法を制定したことに反発した欧米諸国の首脳が複数人欠席しました。この時の日本は、安倍首相が出席して一部の国から批判を受けています。
 さらに、リオ五輪に至っては、ブラジル大統領が弾劾手続きで職務停止中となったことで、世界から批判され、40人ほどしか参加しないという結果でした。

 このように、各国の国家元首が理由をつけて、五輪開会式への参加可否を決めることは、五輪の場において政治的主張をすることに等しいといわざるを得ません。IOCは、この傾向に懸念を示すべきであり、開催都市に対しては、五輪開会式への国家元首の招待・参加を重要視しないよう指導するとともに、国連を通じて世界各国に要請すべきではないでしょうか。

 したがって、今回の安倍首相についても、五輪開会式への参加可否を政治的主張に絡めないでほしいと願い、大会組織委員会とJOCが政府筋に進言すべきだと思います。

 もし、安倍首相が、平昌五輪を欠席すれば、日程調整を理由にしたとしても、韓国は従軍慰安婦問題への抗議と受け取り、2年後の東京五輪開会式には、韓国大統領は報復で出席しないでしょう。

このように、五輪開会式への参加可否が、政治的主張の悪しき応酬に利用されれば、過去のソ連とアメリカのボイコット合戦を再来されかねません。

 2年後の東京五輪において、世界から、日本の核廃絶への取組を批判している国や、原発事故処理や不十分な受動喫煙規制を非難の理由に挙げる国や地域が出てきて、開会式を国家元首がボイコットしてもおかしくありません。

 ついでに言えば、現在、北朝鮮が五輪平和を逆利用していることは、誰もが求めるところですが、それをIOCが穏便に五輪を開催するために、様々な特例措置を北朝鮮と韓国に言われるまま与えることは、五輪の持続可能性から悪しき前例を残すことになると懸念しています。