今年の国連総会(9月17日~30日)において、来年開催される東京オリンピック・パラリンピックの期間中に、世界のすべての争いを停戦する「オリンピック休戦」の遵守を各国連加盟国に呼びかけ、採択する予定です。

 第1・2次世界大戦などで、何度も五輪中止に追い込まれたIOCは、1956年頃から国連にオリンピック休戦を働きかけますが、残念ながら、米ソ冷戦から1992年のソ連崩壊まで、オリンピックは世界の政治体制に翻弄されます。

 しかし、やっとソ連崩壊によって新たな世界平和が構築されると期待したIOCは、1993年の国連総会にて「オリンピック停戦の遵守に関する決議」の採択を得て、開幕7日前から閉幕7日後までは、世界中のすべての争いを停戦するよう呼びかけたのです。

 ところが、2014年、ほんの5年前です。ロシアのソチ冬季五輪大会において、オリンピック(2月7日~23日)が閉幕し、パラリンピック(3月7日~3月16日)の開会中に、あろうことか、ロシア軍がクリミアに侵攻したのです。

 ロシアは、「オリンピック休戦」に、パラリンピックは含まれていないという主張なのでしょうか。それとも、軍の侵略を擁護する理屈なのかも知れません。なお、当時の国連総会での決議は、パラリンピック期間を含んだ日程まで明記されていなかったようです。

 その齟齬を受けたのかどうか、2016年リオデジャネイロの「オリンピック休戦」に際しては、当時の国連事務総長が、「2016年オリンピック・パラリンピック大会期間中を、オリンピック休戦として、全世界での戦闘行為の停止を求める」と声明しています。

 だとすれば、2020東京大会は、「オリンピック休戦」ではなく、「オリンピック・パラリンピック休戦」として、期間を「五輪予選開始日(7月22日)《なお、開会式は7月24日》)からパラリンピック閉会式(9月6日)」の前後7日間、すなわち、7月15日から9月13日までを、はっきりと提示すべきだと思います。

 この休戦決議は、これまで、すべて満場一致で採択されていたのですが、今回も国連加盟国から異論が出てくることはないと思います。

 しかし、この機に乗じて、韓国が中国の協力を得て、旭日旗を会場に持ち込むことは、政治的主張に当たるとして、緊急提言してくることを私は懸念しています。いうまでもなく、採決を揺るがすことはないものの、世界にむけて注目させる効果は十分あります。

 韓国側は、この国連総会の前に、東京五輪・パラリンピック会場への旭日旗の持ち込み禁止措置を、組織委員会に求めたことは、国連での緊急提言を想定して、日本側の言質を取ろうとしたと考えられます。

 ところが、組織委員会は「旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならないと考えており、持ち込み禁止品とすることは想定していない」と即答したのです。これはあまりにも、迂闊ではないでしょうか。

 周知のように、韓国は、特にサッカー大会のたびに、旭日旗の戦犯旗主張を繰り返してきました。特に、2013年東アジア・カップの日韓戦で、韓国サポーターが伊藤博文を暗殺した安重根の肖像画を掲げて、旭日旗に対抗したことがあります。これを来年の東京大会で繰り返すことは間違いありません。その対立に対して、韓国側の肖像画だけを排除できますか。

 この件で、JOCは、組織委員会に任せておくべきではありません。IOCは、NOC(JOC)に対して、「自律性を確保し、オリンピック憲章の遵守を妨げる恐れのある政治的、法的、宗教的、経済的な圧力、その他のいかなる種類の圧力にも対抗しなければならない。」と命じています。

 したがって、JOCは、すべてのNF(国内競技団体)に対して、旭日旗や肖像画の持ち込みはもとより、対戦相手と意見が異なる主張を、会場で一切行わないようサポーターに注意喚起すべきであり、NFは、入場口において、積極的に啓発したうえでチェックすべきではないでしょうか。