中国の武漢を発生源とする新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、IOCがWHOと協議したと報じられました。ネット上には「東京五輪は中止」という偽情報が拡散しています。

 結論から言いますと、五輪が中止という選択肢は、戦争でも起きない限り、IOCの中にありません。また、秋期にずらす、翌年への延期も、放送権の契約条件等でありえません。

 今回の新型コロナ流行は、7月頃には終息期に入るという情報もありますが、仮に、専門家の予想をはるかに超えて、パンデミックが終息しない場合、IOCが一番懸念するのは、主要な国々が選手の派遣を見送るという流れが止まらなくなることです。

 組織委員会の対策部門は、これまで、様々な感染症リスクへの対策を検討してきました。リオ五輪でのジカ熱や平昌冬季五輪でのノロウイルスはもとより、エボラ出血熱、風疹、デング熱など、世界の感染症リスクを想定して、対策は出来ていたはずです。

  また、過去のSARAやMERSの感染症は、五輪開催の時期とズレていたため、大会開催に直接的な影響はありませんでした。

 しかし、今回の新型コロナは青天の霹靂です。選手の安全隔離や海外観光客の厳格審査や入国拒否など、効果的な対策が取れるのか、間に合うのか、見通しが立ちません。

 もし、 日本国内において 感染拡大の終息が見通せなければ、最終的手段として想定できるのは、IOCが、アリーナ等の室内競技を「無観客試合」にすることを世界に提案して、マラソンの札幌移転のように強権発動することではないでしょうか。

 IOCにとっては、テレビやパグリックビューイングなどの需要が一層高まり、IOCの主要財源である放送権料は効果的に守られます。一方の組織委員会は、最も重視している入場料が大打撃となり、大減収は避けられません。

 伝染病対策として「無観客試合」にしたケースは、過去のオリンピック競技はもちろん、Wカップ等の国際大会では見当たりません。これまで時々、サッカー等で見られる「無観客試合」は、チームや観客の不祥事に対して、主催団体が課す制裁の場合がほとんどです。

 しかし、メキシコでは、2009年の新型インフルエンザ発生により、国内リーグの試合を「無観客試合」としたケースはあります。また、2010年には日本国内でも、宮崎県のサッカー試合で、口蹄疫予防から「無観客試合」となっています。

 なお、期待通り終息へ向かったとしても、しばらく風評被害が続くことは避けられません。2020年の訪日観光客を3600万人と期待して、インバウンドによる経済効果を見込んでいた政府や経済界は、相当の打撃を覚悟しなければならないことは確かです