閉会式に垣間見えた思惑!

 広島市が「広島原爆の日(8月6日)」に、五輪関係者に黙とうを呼び掛けて欲しいとIOCに要請したところ、バッハ会長から返信があり「人は皆、亡くなった方々を追悼したいという思いでも一つになる。このため、閉会式で、そういった思いを巡らせる時間を設け、スタジアム内の人だけでなく、世界中の数十億人の人々すべてが今は亡き愛する人たちをしのぶ時間にしたいと考えました。」と広島市から公表されています。このことは【第35編】でも触れましたので、閉会式においてどのような演出にするのか注視していました。
 ところが、閉会式の中盤を終えても、類するような演出がありません。結局、最終演出である「次回のパリ大会への引継ぎ式」の直前になって、会場のスクリーンに「アイヌ古式舞踊」、「沖縄のエイサー」、「秋田の西馬音内盆踊り」、「岐阜の郡上踊り」が、映像で続けて流されたのです。そして最後に、会場の舞台が急に明るくなり「東京音頭」が始まります。
 そのときにNHK放送のアナウンスが、「(盆踊りは)お盆で迎えた先祖の霊を供養する行事でもある夏の風物詩として各地で親しまれてきました。」と紹介した後、「日本の伝統や歴史、郷土の特徴を踊りを通じて表現し、世界中から集まった選手に、日本の多様性やその歴史の深さを感じてもらいたいという思いが込められています。」と続けます。
 そして、海外選手や子どもの踊る姿が紹介された後、最後に「開会式の演出チームに聞きますと、亡くなった人たちの思いを受け継いで、前を向きながら「追悼」する時間にしたい、ということでした。」と組織委員会の演出意図を説明したのです。
 これが、広島側の黙とう依頼に返信したバッハ氏の意図を汲んだ組織委員会の演出だったのでしょうか。私は大変遺憾です。