今の私立学校における「運動部活動」の現状を見ると、生徒たちの運動能力の競い合いではなく、「私学経営」を目的とした露骨な勝利主義としか感じられません。特に、「高等学校野球連盟」の「甲子園大会」などは、都道府県名より、代表高校名のほうが注目されています。

 そのため、スポーツは「する、見る、支える」と言われてきましたが、今や学校名の争いと化して、テレビ報道の過熱化による「見るスポーツ」に特化しています。

 特に、高校・大学の私立学校は、校名を全国に広めるために、「高校野球・甲子園大会」をはじめ、様々な全国大会が報道されるようになりました。いまや、「硬式野球」をだけでなく、バレーボールや水泳、機械体操などに全国放送が広がっています。

 そのため、生徒数の減少により廃部となる部活動も増加した少子化時代を踏まえてスポーツ庁は、2017年度に「運動部活動等に関する実態調査報告書」を公表しました。それによると、2016年度以降に体育会系運動部を廃部した公私立中学校は13.9%もあり、多様な種類の部活動が存続することは難しくなっています。

 また、運動部活動の評価について、「仲間ができる」(68.3%)、「体力・精神力が付く」(57.7%)、「社会性・協調性が身に付く」(48.3%)、「上下関係が学べる」(42%)、「達成感を感じられる」(38%)などが上位を占め、「知識や技術を習得できる」は25.3%、「安価な費用で専門性が身に付く」は6.7%で、競技力向上よりも集団的活動から得られる対人関係の能力醸成に対する期待が大きい傾向が示されました。

 運動部活動については、大会成績を追求して、長時間の厳しい練習が課されるなど“過熱”だとして批判される活動時間は、「適切」が51.7%、「多すぎる・やや多い」が計27.4%で、逆に、「少なすぎる・やや少ない」とする回答は17.3%だったようで活動が過熱化していった傾向が示されています。

 一方で、2018年策定のガイドラインでは、「日本スポーツ協会」の研究に基づき、平日は2時間程度、休養日を週2日以上設けることという基準を示されている活動時間」については、地元の教育委員会や学校で時間規程が「ある」40.7%、「ない」20.7%、「わからない」という答えが38.7%を占め、活動時間についての保護者の関心は低い傾向が見られたと報告されているのです。

 また、子どもの部活動について保護者が負担を感じること(複数回答可)は、「お弁当の用意」(39%)、「日常の活動や練習試合などの送迎」(34.3%)、「ユニフォーム等の洗濯」(26%)などで、子どものサポートに関することが上位を占めた一方で、「合宿など遠征への帯同」(13%)、「差し入れの準備」(13%)、「活動費のなど会計管理」(12%)が負担だという保護者の回答もあり、一部の保護者は部活動の運営協力も担わせられていることを不満としていると報告されています。さらに、部活動で経験した保護者の悩みは、「家族で過ごす時間が減った」(23%)に次いで、「交通費や合宿費などお金がかかる」(18.7%)、「保護者の協力がなければ成り立たない」(16%)も多かったようで、部活動の出費については「負担を感じない」「まったく負担に感じない」が計37.4%である一方、「非常に負担を感じる」「負担を感じる」が計34.7%もあり、約3分の1の保護者が「出費に負担」を感じているようです。

 専門家は、「部活指導員制度」をしっかりと導入してほしいと話をすすめましたが、部活指導員は基本的に、勤務日数は週3日程度であり、給与も安く指導者の『本業』にはなりません。定年後の方や、自由業の方の応募が多かったようですが、指導者は手本的な指導をせず、遊びを見守る程度の指導しかできない方がおおかったので、「部活指導者」の契約を断りしたことのようです。そのうえで、「他人に任せようとしているくせに、偉そうだなとは自分でも思いましたけど、大切な部員たちを、誰でもいいから、お任せしますなんて気持ちにはなれなくて、結局、部活指導員の方に来ていただくという話はなくなった。」誰かに手伝ってほしいけれど、誰でもいいわけじゃないという先生は多いようです。また、実際の出費額(年間)は、「1万円以上~5万円未満」(36.3%)、「1万円以下」(25%)、「5万円以上~10万円未満」(17%)ですが、「10万円以上~15万円未満」(7.3%)、「25万円以上」(1.7%)という回答もあったようです。

 「うちは元Jリーガーの方に部活指導員として来ていただきました。生徒たちや保護者の受けもよくて、土日と平日1日は必ずその方に見ていただいて、その方がいらっしゃらない時は、その方が組んでくださった練習メニューを子どもたちに提示して、やってもらっていました。私自身も学生時代はサッカー部だったのですが、ただサッカーをしていただけの普通のサッカー好きですからねえ。私なんかに指導してもらうよりは、断然いいだろうと思いましたよ」

 確かに、学校の先生じゃないし、教員免許も持っていませんが、「この学校の新体操部を全国大会に導いてください」と言われて部活指導員になったので、その夢を叶えたいと思っています。そのためには、部員たちとしっかりコミュニケーションをとって、出勤しない日も連絡を取っていました。

 子どもたちと親しくなって、彼女たちの新体操の技術を磨こうとしただけです。もちろん、競技に取り組み人前で演技をする上で必要なメンタル教育もしましたよ。でもそのことが、学校教育の妨げになるっていうのはおかしいと思いません? 彼女たちの担任だっていう先生方にもお会いしましたけど、私をどこか馬鹿にしている雰囲気で、とても嫌だった」といいます。

 学校の「運動部活動指導者」は、誰が担うべきなのか。スポーツ庁は、「学校関係者」「スポーツ指導者」「競技団体」は、これからの「学校運動部活動のありかた」を真剣に議論すべきです。