世界的に、パラリンピックへの取組みが明らかに高まっていることについて、(その1)で紹介しましたが、日本においては、選手養成も含めて、国民の障がい者スポーツの普及・振興全体が遅れていることを、あらためて痛感しました。

 障がい者の公共スポーツ施設利用の問題点については、すでに、4月14日のブログで現状を紹介していますので、改めて、ポイントを加除して説明いたします。

   公共施設が車いすバスケ受け入れない理由

 第1に、現在の「公共スポーツ施設」は、2003年施行の地方自治法改正によって、民間事業者も管理運営できる「指定管理者制度」が導入され、その指定管理者は、公費節減の使命を受けて、厳しい指定管理料で施設を経営しています。

 その施設で、車いすのラグビーやバスケットボールの大会を受け入れた場合は、練習とは比べ物にならないほどのスリップ痕が残ります。なお、床に窪みができて、床板の一部を張り替えた施設もありました。

 その場合、床板の補修費や使用停止日数の損失を補償されなければ、民間企業の指定管理者が、自己資金で回復することは、極めて厳しいのが現状です。

 したがって、今回のパラリンピックをきっかけに、障がい者スポーツの機運が高まることは、歓迎すべきことですが、現状のままで、障がい者スポーツの受け入れ拒否が強いとして、現場の対応を批判することは筋違いだと思います。

 第2に、区市町村の公共施設の利用は、納税者である住民が優先であると、条例に定めている自治体がほとんどです。
 しかし、障がい者スポーツのチームメンバーは、広域の他市から集まっていますので、施設申し込みの順位がさがり、希望する日時が取れないという問題もあります。
 なお、すでに施設の中には、特例で申込み順位を優先しているところも出始めています。

 第3に、障がい者対応の建築基準は、平成5年に「通称:ハートビル法」の制定、続いて「通称:交通バリアフリー法」や「通称:バリアフリー新法」が制定され、平成18年ごろに、やっとハード面の法整備が整いました。
 ところが、いまの公共スポーツ施設の多くは、バブル経済期(昭和後期)に、旧基準で建築されているため、バリアフリー環境は極めて不十分です。
 
 では、どうすればいいのでしょうか。

 まず、公共スポーツ施設を管轄する行政が、指定管理者に、障がい者使用を積極的に受け入れるよう指示する条件として、床や壁面の保護や改修に必要な費用を補填する必要があります。

 なお、渋谷区スポーツセンター(出資法人が指定管理者)では、行政側の意向を受けて、「車いすラグビー」の練習会場として提供しています。しかし、どうしてもタイヤのスリップ痕が残るので、良い洗剤を探し、ボランティアの協力も得て、使用後に総がかりでフロアをきれいにする努力をしています。
このような、行政の支援を得て、出資法人が積極的に障がい者スポーツの受け入れをしているところも出てきました。

 各自治体も同様の思いはありますが、ご存知の通り、全国の地方財政は厳しく、優先順位として公共施設の整備費や指定管理料の増額ができるところは限られています。

 東京オリンピック・パラリンピックに向けた国予算は、相当に増額されていますが、ほとんどが競技力向上費です。
 全国に障がい者スポーツを普及振興するためには、障がい者スポーツ専用施設の設置とともに、希望する公共スポーツ施設に、上記の整備費及び運営費に補助をしていくべきではないでしょうか。

 なお、ついでに、スポーツ施設の車いす観客席について紹介すれば、オリンピック会場は全席数の0.75%以上、パラリンピック会場は1%以上にするようです。加えて、前席の観客が立ち上がっても観覧可能にする場所に、同伴者席も横に座れるように設置することを検討中です。
 ちなみに、現在の、「味の素スタジアム」は0.68%、「国立代々木第一体育館」は0.08%に止まっていますので、期待したいと思います。