‘20年東京五輪・パラリンピックの組織委員会による「大会ボランティア」と、東京都が公募する「都市ボランティア」の募集が始まりました。

 しかし、大会ボランティアについては、厳しい活動日数、宿泊場所の確保、自己負担経費等々の厳しさから、早々に「ブラックだ!」「やりがい搾取だ!」などと揶揄されています。

 そのため組織委員会は、各大学に学生の動員を懇願するとともに、後出しでしぶしぶ(?)、ボランティアに1日千円のプリペードカードを配付することを決めたのです。

 しかし、遠方から東京に駆けつけてくれる人が、最も不安なのは、必ず高騰する宿泊料金とほぼ満席になる宿泊所の確保でしょう。都内・近県に親類縁者がいない限り、宿泊場所を確保することは、至難の業になります。

 ところで、個人に配付するプリペードカード経費を単純計算すると、大会・都市ボランティア(千円×10日×8万人)で8億円、大会ボランティア(千円×5日×3万人)で1.5億円、その他、製作費・事務費等を含めると、約10億円はかかります。

 それだけの財源があれば、都内にある約120校の大学に、夏季休暇中の校内食堂で朝・夕食を提供したり、使用可能な学内宿泊施設(合宿寮や冷房可能な仮設宿泊施設等)の貸し出しをお願いして、その必要経費に、プリペードカード支払い分を充当すれば、相当受け入れてくれるのではないでしょうか。
 さらに、設備の整った高校や大手企業の一部も可能な範囲で加われば、もっとボランティアの食住を確保できると思うのです。
 あの、災害時ボランティアに対してさえ、地元自治体が感謝しながら、炊き出しなど可能な範囲の食住を提供しているではないですか。

 もちろん、ボランティア経験の多い人には、すべて自己完結でお願いするとして、不慣れな人のためには、少しでも利便性を確保しなければ、目標のボランティア人数を確保できない不安があります。

 それに、今回のボランティア確保問題は、東京の11万人だけではありません。五輪会場は、千葉、神奈川、埼玉、静岡の近県はもとより、札幌、福島、宮城の各県にも及んでいて、それぞれの都市でボランティアは必要です。
 特に、近県のオリンピック関係者は、東京が現金カードを配付することに危機感を持っており、関東地区ではボランティアの争奪戦となると懸念する声が少なくありません。

 組織委員会と東京都のボランティア戦略は、最初から「お願いをする」という丁寧な姿勢ではなく、「やりがい探し」「五輪に参加できる」などと、「選ばれし皆さん」というイメージが強かったように、私は感じていました。
 そのため、徐々にブラックや搾取などの極端な言葉が強まったことに、組織委員会は危機感を覚えて、募集開始直前になり「少しですが…」と現金カードを配付することに至ったと思いますが、私は、少し安易だったような気がします。

 なお現在、ボランティアの愛称を検討中のようですが、参加を躊躇している人にとって、そんなことはどうでもいいことです。それよりも、主催者が都内の大学や企業に食住等の協力を依頼するなど、もっと検討すべき対策があるのではないでしょうか。

 言うまでもなく、イベント手伝いと災害時ボランティアの参加意識が異なることに、もっと配慮すべきだったと思います。