スポーツ庁は、19年度予算の競技力向上予算、約100億円のうち、33競技団体に配布する「競技力向上事業助成金」の重点配分先を公表しました。

 この支援は、平成28年にスポーツ庁が策定した、いわゆる「鈴木プラン(競技力強化のための今後の支援方針」のラストスパート期として、20年東京五輪・パラリンピックのメダル獲得の最大化を目指すために付けられた予算の傾斜配分です。

 評価内容は、透明性、公平性に十分配慮するとして、先のリオ五輪及び2017年から2019年3月までの世界選手権等の成績に加え、NF自らが策定した強化戦略プランの計画性・実行性と、その達成度を加点しています。そのうえ、最終的にはJSC、JOC、JPCとの合意をもって決めたと説明しています。

 評価区分は、「S」と「A」の加算競技と、それ以外に分けていますが、五輪競技の区分「S」は、共通基礎点に30%を加算し、区分「A」には、20%を加算するというものです。

 その結果、重点支援競技に指定されたのは、区分「S」が、空手、柔道、体操、バドミントン、レスリングの5競技であり、区分「A」は、ウエイトリフティング、水泳、スケートボード、スポーツクライミング、セーリング、ソフトボール、卓球、テニス、野球、陸上競技の10競技です。

 さて、この傾斜配分の結果に、スポーツ界だけでなく、それぞれの競技を応援している国民は、納得するでしょうか。

 まず、びっくりしたのは、プロ選手が中心のテニスと野球が「A」に選ばれたことです。

 重点支援競技に対する加算理由について、スポーツ庁は、2020年東京大会に向けた国内外の強化合宿やチーム派遣・招待など、NFが日常的・継続的に行う強化活動を支援することと、強化合宿や競技大会等におけるケア、トレーニング、動作分析、映像分析、栄養サポート、心理サポートによるアスリート支援をするためと説明しています。

 しかし、この加算理由が、現在トップクラスで活躍している、プロ野球、プロテニスの選手に必要な支援と言えるでしょうか。

 また、五輪での野球競技について、アメリカのメジャーリーグは、五輪中もリーグ戦を止めないと公表しており、メジャークラスの選手はほとんど出場しません。

 ただ、日本人選手は、さすがに日本開催ですから、メジャーから駆けつけることをNFが約束したのでしょう。これで金メダル1個は確実として「A」になったのであれば、メダル獲得数の最大化を目指すスポーツ庁にとって、金1個では費用対効果に矛盾していませんか。

 テニスも、プロ選手にとって、ツアーポイントや賞金に加算されないため、ゲームはプライド戦になっています。リオ五輪では、錦織選手の銅メダルだけですが、今回は、大坂なおみ選手の参加が見込まれて「A」になったのでしょう。ちなみに、テニス競技の金メダルは5個です。

 なお、ゴルフも五輪競技になっていますが、日本人ではメダルが望めないために外されたと思われます。

 一方、評価の観点には、組織体制(ガバナンス等)があり、そこには「競技団体等による不適当な行為が平成30年度末までに判明したものは、(割り引く)」とありますが、パワハラ問題で批判を受けたレスリング競技が、なぜ、「S」に選ばれたのかわかりません。また、「A」のウエイトリフティング競技でも、パワハラ問題があったものの、割り引かれた気配はありません。

 スポーツ庁の「鈴木プラン」によれば、「メダル獲得が全てという考え方は適切ではないが、・・・」といいながら、「日本はメダルの獲得が安定して期待できる競技が固定的かつ少数である。それらの競技だけで飛躍的にメダル獲得数を伸ばすことは難しい。日本が過去最多の金メダルを獲得するには、得意とする競技の強化を一層図るとともに、メダルを獲得できる競技数を増やす必要がある。」とあるように、今回の発表は20年五輪において、メダル獲得を確実にしている団体だけを重点的に支援するプランでした。

 結局、今回の重点支援策によって、五輪のメダル獲得傾向は、すでに明らかです。メダル取得が濃厚の「A」競技は確実に取れ、境界線で期待されている競技は苦戦しそうです。まして、メダル対象外と決められた競技は、参加することに意義ありで終わるというイメージです。

 20年大会後は、メダル対象外の弱小団体がさらに弱体化し、子どものスポーツ選択もますます集中することになりそうです。